もう一つ、オブジェクトの立体感や構造を強調するための機能として「アンビエントオクルージョン」があります。GIは、間接光を計算してシーン全体を明るくしていくため、ややもすると絵が眠くなりがちです。アンビエントオクルージョン(AO)は、基本的にはGIの機能ではなくマテリアルの性質を変える「シェーダー」ですが、眠くなったGIの絵をシャープにする目的でも使えます。事実上、「GIを使う場合、必ずAOも使う」と考えて差し支えありません。それではAOを追加してみましょう。
図071-10
オブジェクトの面が内側に折れている部分や目地等が暗い線で強調され、立体感や構造がよりわかりやすくなりました.
下の図071-11aはAO有り、図071-11bはAO無しの絵です(サンプル071f)。
図071-11a
図071-11b
AOの基本的な働きは、「周囲を壁に囲まれた、奥まった部分の性質を変える」ことです。普通は、奥まった部分を暗くします。また、AOはマテリアルとレンダリング設定の二カ所で指定できます。
マテリアルに適用したAOは、オブジェクトの色や明るさだけでなく、透明度やバンプ、アルファ等いろいろな性質を変えられます。また、AOの効果が生じるのはそのマテリアルを適用したオブジェクトだけです。
これに対して、レンダリング設定に適用したAOは、オブジェクトの明るさだけを変えます。また、シーン全てのオブジェクトに対して効果が生じます。
AOとGIの計算方法や結果はよく似ていますが、二つの点で異なっています。
1. GIは周囲の照明を調べて計算するが、AOはオブジェクトの形状しか調べない。
つまり、AOはライトや環境を考慮しないので、GIに比べて計算が簡単できれいです。
2. GIは距離の二乗に反比例して光を減衰させるが、AOはグラデーションを使って自由に減衰を指定できる。
つまり、絵作りのための機能としてはAOの方が優れています。
このような理由から、AOをGIの補助として使うわけです。
また、「奥まった部分」というのは一般的に汚れがたまりやすく、また風化や劣化しにくいため、表に出ている部分に比べてオブジェクトの色自体が暗く、濃くなっているのが普通です。AOは、照明ではなく、この効果を表現するものだと考えるといいでしょう。実際、AOを強くかけると古ぼけた質感になり、AOを弱くすると新品の質感になります。
最後に、GIの補助としてAOを使う場合は、忘れずに「透過を考慮」オプションを選択してください。AOは本来奥まった部分、つまり「オブジェクトの形状」を調べて値を変えるシェーダです。照明や光は関係ありません。つまり、デフォルトではそのオブジェクトに適用されたマテリアルの透明度やアルファを考慮しないようになっているのです。
確かに、現実世界でもガラスの周囲には汚れがたまります。しかし、アルファで切り抜いた部分にまで汚れがたまるのは明らかに変です。透過を考慮オプションを使うと、透明な部分やアルファで切り抜かれた部分を「形状」に含めないようになります。
下の図071-12aは透過を考慮あり、図071-12bは透過を考慮なしの絵です(サンプル071g)。
図071-12a
図071-12b
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