イメージベースドライティングというのは、「画像を使ってシーンを照明する」ことであり、これによって「画像を使って環境を作る」ことが可能になります。照明基礎03では「発光するオブジェクトを使ってシーンを照明する」方法について説明しましたが、それをさらに一歩進めた方法だと言えます。まずIBLの利点について三つ説明します。
1. 画像を使って照明するので、3Dオブジェクトの色や陰影がその画像によく馴染む。
したがって、実写画像に3DCGの画像を合成する際によく使われます。
図044-1
2. 照明だけでなくハイライトや鏡面反射もリアルに表現できる。
したがって、周囲に写り込むオブジェクトを作る必要がなく、シーンの構成が非常に簡単になります。
図044-2
3. 写真を扱うことで絵作りの勉強ができる。
実はこれはとても重要なことです。3DCGでリアルな画像を作るには、技術以前に「リアルとは何か」を理解しておく必要があります。そして、この理解は現実の世界を注意深く観察することによって得られます。写真そのものは現実ではありませんが、現実を注意深く観察するための手段として、また観察力を養うための訓練方法としてとても有効です。
下の写真は今回のサンプルファイルに使用するHDRパノラマ画像で、私が撮影しました。-10EVから0EVまで5段階に露出を変えて撮影した合計150枚の写真を合成して作っています。カメラはCanon EOS kiss X4、レンズはSigmaの15mmを使いました。
図044-3a
HDRパノラマ画像をダウンロードする(約9MB)
HDRパノラマ画像の明るさを変えたムービーを見る
150枚の元画像を見る(約500KB)
図044-3b
HDRパノラマ画像をダウンロードする(約9MB)
HDRパノラマ画像の明るさを変えたムービーを見る
次にIBLの欠点について三つ説明します。
1. そもそもIBL用の画像を作るのが難しい。
IBLに使う画像は二つの点で特殊です。一つは、シーン全体を覆って照明するため「パノラマ写真」であること。もう一つは、太陽などの明るい部分の情報を正確に持っている「HDR画像」であることです。
15年前にフィルムカメラを使ってHDRパノラマ画像を作るのは本当に大変でした。しかし、現在ではデジタルカメラで数十枚の写真を撮影し、それをつなぐことで比較的簡単に作れます。また、そのためのハードウエアやソフトウエアもいろいろ市販されています。IBL用にHDRパノラマ画像の素材集もいろいろ市販されていますが、私としては、絵作りや写真の勉強も兼ねて自分でHDRパノラマを作ることをお勧めします。そんなに難しいものではありません。
2. レンダリング時間が長い。
GIを使ってコントラストの高いシーンをレンダリングするので、どうしてもレンダリング時間が長くなります。ただし、同様の品質の背景を通常のオブジェクトとマテリアルで作る場合に比べたら、はるかに簡単に制作でき、短時間でレンダリングできます。
3. 空など遠くにあるものは問題ないが、地面や壁など近くにあるものは扱いが難しい。
これはIBL用の画像を空オブジェクト(無限球)に貼付けた場合、「それに触れない」からです。この問題は、特にオブジェクトを床に置いて影を描かせる場合に顕著になります。
このような場合は、床だけ通常のオブジェクトで作成し、どこかで背景とスムーズにつなぐ必要があります。
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