次に、GIを使ってレンダリングしてみます。GIという言葉の元々の意味は、「光が持っている性質を全て(グローバルに)計算して、自然な照明(イルミネーション)を再現する」ということでした。したがって、基本的にはレイトレーシングによる光の鏡面反射や屈折の表現もGIに含まれます。しかし、現在3DCGの世界で使われる「GI」という言葉はもう少し限定されていて、パストレーシングによる「オブジェクト間の光の相互反射」または「間接照明」を意味します。というわけで、このテキストでも「GI」と「間接照明」をほぼ同義の言葉として使います。ただし、技術の進歩とともに「GI」という言葉の意味も変っていくと思われるので、この点は注意してください。それでは、レンダリング設定で「特殊効果」から「グローバルイルミネーション」を選択し、「ビューをレンダリング」して下さい。
図041-7
「明るすぎる」という問題があるものの、ずいぶんリアルな絵になりました。
しかしGIの計算は、レイトレーシングの計算に比べて時間がかかります。たとえば私のMacBookAirでは、ステップ3の計算に2秒しかかかりませんでしたが、GIの計算には13秒もかかりました。
一般的に、GIの計算には単純なレイトレーシングの計算の数十倍の時間がかかります。例えば、ステップ3のシーンで影のタイプを「レイトレース」にすると1秒以下で計算が終わります。
しかし、ここ数年で「単純なレイトレーシング」を使う機会はかなり減りました。例えば「エリアシャドウ」、「ぼけた鏡面反射、屈折」、「アンビエントオクルージョン」、「被写界深度」、「モーションブラー」といった特殊効果を使うことが多くなり、これらは、GI程ではないにしてもやはり「単純なレイトレーシング」の数倍の計算時間がかかります。
これらの計算には「分散レイトレーシング」という技術を使うのですが、ここでは「複雑なレイトレーシング」と呼ぶことにしましょう。そして、複雑なレイトレーシングを組み合わせてシーンを作っていくと、いつの間にかGIを使うのと変らない計算時間がかかるようになり、「これならGIを使っても大差ないな」という「消極的な理由」から私はGIを使うことが多くなりました。
そして、一度GIを使ってしまうともうレイトレーシングには戻れません。なぜなら、GIで得られる自然な絵をレイトレーシングの機能だけで得るのは不可能だからです。また、GIを使った方が簡単にシーンを作成できます。これは、現実には存在しない「補助的なライト」や「補助的なマテリアル、テクスチャ」を置く必要がないからです。
GIを使いこなすための基本は、「GIの設定を最適化する」ことにつきます。ところがこれが難しい。GIの設定が難しいのは次のような理由があるからです。
1. GIの計算に向いたシーンと向かないシーンでは、計算時間に数十倍の差が出る。
仕事を始める前にこれを見切れないと納期や予算を見積もれません。また、現状ではGIを使えない場合もよくあるので、こういう場合は速い段階で仕事の内容を変えるか、断る必要があります。
2. どんなシーンであれ、適切な設定と不適切な設定では、計算時間に数百倍の差が出る。
まずCINEMA 4Dのデフォルト設定やマニュアルに書いてある設定は全く役に立ちません。このテキストでは、格段に実用的な設定を説明しますが、それでも万能ではありません。最適な設定は、シーンの構成や仕事の内容によって大きく変わるからです。この部分は各ユーザが努力して調整するしかありません。
またこのような性質から、GIの計算において「速いコンピュータを買う」というのはほとんど意味がありません。「速い」と言ってもせいぜい5倍です。これを10台買っても50倍に過ぎません。速いコンピュータを10台並べても、「最適な設定」には全くかなわないのです。
むしろ、速いコンピュータを買うと「コンピュータが速いから、GIの設定は適当でいいだろう」という「慢心」や「油断」が生じ、ロクな絵を作れない場合がよくあります。
3. GIの多くのパラメータに「最適値」があり、それより大きくしても小さくしても計算時間が長くなる。
ここがGIの一番難しいところです。GIの設定については、次の照明基礎02で詳しく解説します。
4. アニメーションを作るのが難しい
静止画もアニメーションも基本的な設定方法は同じです。しかし、GIのアニメーションでは計算誤差による「ちらつき」が発生するので、これを抑えるためにより的確な設定が必要になります。
GIのパラメータを理解する前にアニメーションを作っても全く勉強にならないので、まずは自由自在に静止画を作れるようになることを目標とするといいでしょう。
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