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カテゴリ: 講座テキスト

R16 マテリアル基礎01- 基本的なチャンネル

R16 マテリアル基礎

レベル/ 対象者:基礎/CINEMA 4Dを少し使える人。
対象ソフトウエア、プラグイン:CINEMA 4D R16
冨士 俊雄/ gtofuji@gmail.com
章番号 題名 内容、及び関連する章 作成日/注記
025 1_基本的なチャンネル 2015.5.7

Step 1

はじめに

  一般的に、「絵」の品質は多くの設定の組み合わせによって決まります。これは別に3DCGに限ったことではなく、絵画や写真の場合も同じです。どの設定が一番重要か、またどの設定が一番難しいかは、制作者の考えや作品によって大きく変わりますが、大体次のような順番になると私は考えています。1. 照明とカメラ

絵を作る時に一番基本となるのは、「照明」と「カメラ」です。これは、「光」と「目」に対応します。この二つがなければ、そもそも絵は成立しません。

そして、この二つを自分のイメージ通りに設定できれば、他に何の設定もしなくても、十分な品質の絵を作ることができます。

逆に、もしこの二つの設定がおかしければ、他の部分をどんなにていねいに設定しても、いい絵を作ることはできません。

美術の授業では、最初に「石膏デッサン」を行いますが、これは照明とカメラだけで絵を作るための訓練だと言えます。

図025-1

サンプル025a のフレーム0

 

2. マテリアルとアニメーション

照明とカメラの次に重要なのは、「マテリアル(質感、材料)」です。

照明とカメラは、シーン(劇場や舞台)に属するもので、オブジェクト(演技者)の属性ではありません。それに対して、マテリアルは個々のオブジェクトの質感を説明します。

また、映像を作る場合は「アニメーション(演技)」もオブジェクトを説明するための重要な属性です。

マテリアルとアニメーションをイメージ通りに設定できれば、多様な表現が可能になります。映像の場合は、「音」も同じぐらい重要なのですが、これはCINEMA 4Dでは作れません。

美術の授業では、次の段階で「静物デッサン」を行いますが、これはガラスや布、金属、果物といった多様な質感を描き分けるための訓練だと言えます。

図025-2a、b

左は、中央の球体にガラスのマテリアルを(フレーム1)、右は発光するマテリアルを適用した例(フレーム2)。

 

 

3. テクスチャとモデリング

オブジェクトの「ディティール(詳細)」を説明するための補助的な属性が「テクスチャ」と「モデリング」です。これは、言ってみれば演技者が着ている衣装や舞台のセットのようなものです。

ただし、ここで言う「テクスチャ(模様)」は、手で描いたりカメラで撮影したテクスチャに限定します。ノイズやグラデーション等のシェーダで作ったテクスチャは、マテリアルの側に含めます。

また、ここで言う「モデリング」は、特に「細部のモデリング」に限定します。オブジェクトを作って組み合わせること自体は含めません。

テクスチャやモデリングは、リアルな絵を作るために不可欠ですが、「照明」や「マテリアル」に優先するものではありません。

図025-3a、b

左は、中央の球体に画像を適用した例(フレーム3)。右は詳細なモデリングを追加した例(フレーム4)。右の絵のポリゴンを見る(025-3c)

 

この章では、マテリアルマネージャと、よく使うチャンネルについて説明します。

 

 

Step 2

マテリアルマネージャとレイヤ

 CINEMA 4Dでは、マテリアルマネージャを使ってマテリアルを作成し、管理します。マテリアルの基本的な操作方法は次の通りです。 図025-4

1. 新規マテリアルを作るには、マテリアルマネージャのメニューから「ファイル -> 新規マテリアル」を選択します。

また、空いている部分をダブルクリックして作ることもできます。

マテリアルのプレビューをダブルクリックすると、「マテリアル編集」ウインドウが開きます。マテリアル編集は古いインターフェイスですが、マテリアル専用に作られているので、素早く作業できます。

2. マテリアルの名前を変えたい場合は、名前をダブルクリックします。

また、マテリアル編集や属性マネージャで変更することもできます。

3. マテリアルを複製するには、「controlキー」を押しながらマテリアルをドラッグします。

また、普通にコピー&ペーストすることもできます。

4. マテリアルを消去したい場合は、「deleteキー」を押します。

シーンに使われていないマテリアルを消去したい場合は「ファンクション -> 未使用マテリアルを消去」を使います。

5. マテリアルをオブジェクトに適用するには、マテリアルをオブジェクトマネージャに表示されたオブジェクト名の上にドラッグ&ドロップします。

また、エディターのオブジェクトに直接ドラッグ&ドロップしても構いません。

6. オブジェクトに既にマテリアルが適用されている場合、マテリアルをテクスチャタグの上にドラッグ&ドロップすると、リンクが置き換えられます。

7. オブジェクトに適用されているテクスチャタグを選択すると、リンクされているマテリアルがオレンジ色の枠で囲まれます。

逆にマテリアルからリンクされているオブジェクトを調べたい場合は、マテリアル編集の「適用オブジェクト」ページを使います。

8. エディター上で、オブジェクトにはマテリアルのプレビューが表示されますが、これの解像度を上げたい場合や、アニメーションを反映させたい場合はマテリアル編集の「エディタ」ページを使います。

9. マテリアル編集のプレビューの大きさや表示を変えたい場合は、プレビューを右クリックします。

 

マテリアルをグループ分けしたい場合は、「レイヤ」機能を使います。

CINEMA 4Dのレイヤは、オブジェクトやマテリアル、タグ、キー等すべての機能を一元的に管理できますが、特にマテリアルはレイヤ以外に管理する方法がないのでよく使います。

図025-5

 

1. グループを作りたい場合は、まずマテリアルを選択し、マテリアルマネージャのメニューから「ファンクション -> 新規レイヤに追加」を選択します。

すると、マテリアルマネージャにタブが表示され、タブの左上とマテリアルの左上に同じ色が付きます。

あるタブを選択すると、そのレイヤに含まれているマテリアルだけが表示されます。

また、左端にある「全て」タブを選択すると全てのマテリアルが表示され、「レイヤなし」を選択すると、レイヤに含まれていないマテリアルが全て表示されます。

2. レイヤの名前を変えたい場合は、タブをダブルクリックします。

また、レイヤマネージャでレイヤ名をダブルクリックしても構いません。

3. 別のマテリアルグループを作りたい場合は、同じように「ファンクション -> 新規レイヤに追加」を選択します。

4. 新しく作ったマテリアルを既存のレイヤに含めたい場合は、「ファンクション -> レイヤに追加」を選択するか、マテリアルをタブにドラッグアンドドロップします。

また、マテリアルをレイヤマネージャのレイヤ名にドラッグ&ドロップしたり、レイヤ名をマテリアルにドラッグ&ドロップしてレイヤに含めることもできます。

また、あるレイヤを選択した状態で新規マテリアルを作ると、初めからそのレイヤに含まれます。

5. レイヤ名の左にあるカラーボタンをダブルクリックするとレイヤのカラーを変更できます。

 

 

Step 3

カラー

  「カラー」チャンネルは、マテリアルの基本的な性質の一つです。マテリアルには多くのチャンネルがありますが、実は一本の光に注目した場合、その光には「前に進む(透過する)」か「止まる(消える)」か「後ろに戻る(反射される)」かの三つの選択肢しかありません。それに、RGBの色によって結果が変わるとか、透過、反射する時にあるルールにしたがって向きが変わるといった性質を組み合わせて、複雑なマテリアルを表現しているのです。

まず、カラーチャンネルは「ランダムに反射される光」を表現し、拡散反射(ディフューズ)ともいいます。

光は、基本的にはライトから飛んできますが、GI(グローバルイルミネーション)を使っている場合は、周囲のオブジェクト(マテリアル)からも飛んできます。

図025-6

サンプル025bのフレーム0

 

色に関しては、カラーチャンネルが白くても、青い光しか入ってこなければ、青い光しか反射されません。

また、カラーチャンネルが赤ければ、白い光が入ってきても、赤い光しか反射されません。

図025-7a、b

左はライトの色が(フレーム21)、右はカラーの色が最終的な色(絵の色)に影響している(フレーム22)。

 

次に、光がランダムに反射されるといっても、完全にランダムなわけではありません。マテリアルの表面に細かい凸凹があると、光をライトの方に反射しやすくなります。

キャッツアイなどはその極端な例ですが、布やセラミック等自然界に存在する多くのマテリアルもこの性質を少なからず持っています。

この性質を表現するには「オレン・ネイアー」という照明モデルに切り替え、「表面粗さ」の値を大きくします。

図025-8a、b

左は表面粗さが0(フレーム14)、右は200(フレーム15)。

現実世界において、全ての物質はカラーの性質を持っています。必ず設定して下さい。

 

 

Step 4

発光

 「発光」チャンネルも、マテリアルの基本的な性質の一つです。私はカラーチャンネルの説明で「光には三つの選択肢しかない」と書きましたが、発光はこれには含まれません。発光は「何も無いところから光が生まれる」現象です。いきなり光が生まれるので、光が飛んでいく方向は完全にランダムです。つまり、どこから見ても同じ色に見えます。

また、周囲から入射する光には影響されません。

図025_9

フレーム1

図025-10a、b

左はライトなし(フレーム23)、右はライトのカラーが青い場合(フレーム24)

 

現実世界において、全ての物質が発光の性質を持っているわけではありません。しかし、発光するものは小さくても目立ちます。これは発光するものが人間にとって有益だったり危険だったりするからです。

本来なら、発光するものはライトで表現するのですが、複雑な形をしていたり、数が多い場合は発光するマテリアルで表現する方が簡単です。GIを使えば、発光するマテリアルでシーンを照明できます。

絵作りにおいて、発光するマテリアルの働きはライトと同じです。

冒頭に書いたように、ライトはマテリアルよりも重要な設定ですから、そういう意味では、発光チャンネルはマテリアルの中でも最も重要なチャンネルだと言えます。

 

 

Step 5

透過、屈折

 透過チャンネル自体はR12から変わっていませんが、屈折によって自動的に生じる鏡面反射の性質を反射チャンネルで変更できるようになっています。「透過」は、「透過する光」を表現するチャンネルで、マテリアルの基本的な性質の一つです。

透過とは、マテリアルの屈折率が1.0の場合で光の方向は変わりません。背後のオブジェクトが透けて見えるので、網戸やストッキングのようなマテリアルを表現できます。

「屈折」は、屈折率が1.0以上(以下)の場合で、光の方向が変わると同時にフレネルの法則に従って鏡面反射が生じます。これは、ガラスや透明な液体を表現する場合に使います。

図025-11a、b

左は透過するマテリアル(フレーム2)。右は屈折するマテリアル(フレーム3)。

 

そして、透過は基本的な性質の中で一番設定が難しいチャンネルでもあります。

その理由はいろいろあるのですが、大体以下の通りです。

1. 内部が見えるので、内部まできちんとモデリングし、オブジェクトを閉じなければならない。

また、隣のオブジェクトと面が重なると汚くなるので、隙間を開けるか、食い込ませる必要がある。つまり、マテリアル以前にモデリングの段階で難しい。

図025-12a、b

左は内部に不正な面を含むオブジェクト(フレーム15)。右は正しいオブジェクト(フレーム16)。

 

2. 屈折が単独で起こることはなく、必ず反射(カラーや鏡面反射、スペキュラ)が生じる。しかもそれらの割合は、光が入射する角度に応じてフレネルの法則に従って変化する。

  図025-13a、b

左は屈折だけのマテリアル(フレーム3)。右は反射を含むマテリアル(フレーム13)。

 

3. 屈折と鏡面反射が同時に複数回起こるので、絵が複雑になり、どのパラメーターを修正していいのか判らない。

同時に、レンダリングが重くなり、試行錯誤に時間がかかる。

 

4. 簡略化した物理モデルを使っているため、「水が入ったグラス」等を普通に表現できない。

つまり、屈折率は本来物体の内部に指定するものだが、3DCGでは物体の表面に指定している。

その結果、一つの面が三つ以上の物体に接する場合を扱えない。

図025-14a、b

左は普通に作ったオブジェクト(フレーム18)。右は面をずらしたオブジェクト(フレーム19)。

 

5. 透過する距離によって効果が変わる「吸収色」という設定がある。

他のチャンネルでは特殊効果でしか使わないような機能を透過は普通に使う。

図025-15

フレーム20

 

透過する光は、必ずオブジェクトに「入る時」と「出る時」の2回計算されます。さらに、屈折がある場合光は「屈折」と「鏡面反射」の二本に分岐します。つまり、透過のレンダリングは、他のチャンネルよりも格段に重いのです。

特に鏡面反射は、放っておくと無限に計算がくり返され、レンダリングが終わらなくなります。これを防ぐために、CINEMA 4Dでは「レンダリング設定 -> オプション -> 鏡面反射の計算回数」をデフォルトで「5回以下」に制限しています。

しかし、これでも重いので、「オプション -> しきい値」の値を「0.5〜1.0」に上げることをお勧めします。光は屈折や鏡面反射を繰り返すうちに暗くなりますが、光がしきい値より暗くなると、そこで計算を打ち切るようになっています。

図025-16a、b

左はしきい値がデフォルトの0.1、レンダリング時間は88秒。右はしきい値が1.0、レンダリング時間は52秒(フレーム25)。

また、「ぼけた屈折」オプションを使うとすりガラスのような質感を表現できます。ただし、このオプションを使うと光がさらに分岐するため非常に計算が重くなります。

 図025-17a、b

左はぼけた屈折が0のマテリアル、レンダリング時間は35秒(フレーム19)。右はぼけた屈折が20のマテリアル、レンダリング時間は135秒(フレーム26)。

 

現実世界において、全ての物質が透過、屈折の性質を持っているわけではありません。しかし、透明なものは目立ちます。これも透明なものが人間にとって重要だからです。例えば、水や空気は透明です。また、人間の目も透明です。

ですから、透明なマテリアルを作る時には十分に時間をかけてください。

また、透明なマテリアルをリアルに作るには、写真を参考にするのが一番です。

 

R16 マテリアル基礎02- 反射

R16 マテリアル基礎

レベル/ 対象者:基礎/CINEMA 4Dを少し使える人。
対象ソフトウエア、プラグイン:CINEMA 4D R16
冨士 俊雄/ gtofuji@gmail.com
章番号 題名 内容、及び関連する章 作成日/注記
026 2_反射 2015.5.8

 

Step 1

はじめに

 鏡面反射は、R16で大きく変わりました。

まず、R15までの「鏡面反射」と「スペキュラ」チャンネルが消滅し、代わりに「反射」チャンネルが新設されました。この反射チャンネルの内部はレイヤシェーダと同じ作りになっていて、これが非常に作業性を損ねています。大きな問題点は以下の二つです。

1. 鏡面反射やスペキュラを作るのに手間がかかる。

R15までは、鏡面反射とスペキュラにはプリセットがあり、チャンネルを選択するだけで使えました。しかしR16には何もないので、毎回シェーダを作るところから始めなければなりません。

2. 反射チャンネルを複数選択、編集できない。

反射チャンネルの内部はマテリアルごとに違っているので、複数選択、編集ができません。

これらの問題は、いずれ改善されていくと思うのですが、それまでのつなぎとして以下のような対策を考えました。

1. よく使う鏡面反射やスペキュラをプリセットとして登録しておく。

2. 反射チャンネルの「全ての鏡面反射の明るさ」と「全てのスペキュラの明るさ」を複数選択、編集するためのXPressoを使う。

図026-1

サンプル026a

 

Step 2

拡散、鏡面反射

  「鏡面反射」もマテリアルの基本的な性質の一つで、「規則的に反射される光」を表現します。

その規則とは、「入射角と反射角が等しい」ということで、要は鏡の性質です。

鏡面反射は、金属やガラス、プラスチック、液体など、表面がツルツルのマテリアルには必ず発生します。 また、鏡面反射には以下のようなオプションを設定できます。

1. 反射される光の方向をランダムにする。

これは「表面粗さ」で変更します。

原理的に、鏡面反射を粗くしていくと、GIを適用したカラーチャンネルと同じになります。ただし、計算方法が違うので、計算が重く砂目状のノイズが発生します。

したがって、この機能は表面が「ちょっと粗い」金属やプラスチック、塗装面等を表現する場合に使ってください。

図026-2a、b

サンプル026b

左は表面粗さが0(フレーム1)のマテリアル。右は表面粗さが50(フレーム2)のマテリアル。

 

2. 入射角に応じて反射率を変える。

これは「フレネル」で変更します。

フレネルは、光の入射角によって反射率が変わる現象で、同時にその性質を発見した人物の名前です。

現実世界のマテリアルは全てフレネルの性質を持っていて、「正面から見るよりも、斜めから見た方が反射率は大きく」なります。

金属や木材等ではほとんどわかりませんが、透明なガラスやプラスチック、フィルムではフレネルが非常に重要になります。この性質に注意してください。

R15まで、フレネルはフレネルシェーダを使ってマニュアルで調整していましたが、R16では多くのプリセットが入っているので、ほとんどの場合ここから選択するだけで十分です。

図026-3a、b

左はフレネルなしのマテリアル(フレーム5)。右はフレネルありのマテリアル(フレーム6)。

また、フレネルには多くの金属のプリセットも入っています。

金属の場合、色を含めて反射率が変化するので、マニュアルで調整するのは大変なのですが、プリセットを使えば簡単にリアルなマテリアルを表現できます。

図026-4a、b

左はフレネルが金のマテリアル(フレーム9)。右はフレネルが銅のマテリアル(フレーム10)。

 

3. 反射角の方向のランダムさを、さらに縦方向(U方向)と横方向( V方向)で変える。

これは「異方性」モデルを使って表現します。

異方性は、マテリアルが持っている細かい繊維や傷が原因で発生します。場合によっては、結晶構造や髪の毛の束、木目のような構造で発生する場合もあり、現実世界でもよく見られます。

特に、建築やプロダクトの世界では意図的に傷をつけて異方性を持たせた材料を使うことが多く(これをヘアライン仕上げといいます)、このようなマテリアルを表現する場合に使います。

図026-5

フレーム7

 

4. 各設定をテクスチャでコントロールする。

R15まで、バンプやアルファはマテリアル全体に一つしか適用できませんでしたが、R16の反射チャンネルでは反射レイヤや内部の設定(性質)ごとにテクスチャでコントロールできるようになっています。

図026-6a、b

左は表面粗さにストライプ状のテクスチャを適用したマテリアル(フレーム3)。

右は鏡面反射レイヤそのものにマスクテクスチャを適用し、金色の鏡面反射レイヤに重ねたマテリアル(フレーム4)。

 

 

 

Step 3

反射、スペキュラ

 スペキュラも、R16で大きく変わりました。詳細については、前の鏡面反射を参照してください。

 

「スペキュラ」チャンネルは、実はマテリアルの基本的な性質ではありません。

「カラー」、「鏡面反射」、「スペキュラ」は、全て「反射される光」であり本質的には同じです。

カラーと鏡面反射の違いは、反射される方向が「ランダムか規則的か」ですが、これも表面粗さを大きくすると同じになってしまいます。

また、鏡面反射とスペキュラは両方とも規則的に反射される光です。

それでは何が違うのかというと、鏡面反射は全ての光を反射するのに対して、スペキュラはライトからの光しか反射しません。つまり、鏡面反射はスペキュラの機能を含んでいるのです。

これは、カラーがライトの光しか反射しないのとよく似ています。ただし、カラーはGIを適用することでライト以外の光も反射するようになります。

しかし、スペキュラにライト以外の光を反射させる方法はありません。

スペキュラという機能が生まれたのは、30年以上も前の話で、当時はコンピューターの速度が遅く、GIはおろか鏡面反射さえ満足に計算できませんでした。

その当時の技術で、少しでもマテリアルをリアルに見せるための方便としてスペキュラが開発されたのです。

したがって、鏡面反射やGIを普通に使えるようになった現在、スペキュラの存在意義はかなり薄れているといえます。

実際、ほとんどのシーンはスペキュラなしで作れますし、「規則的に光を反射する」という本来の目的でスペキュラを使うことはまずありません。

したがって、CINEMA 4Dを始めたばかりの人は「スペキュラを無視」して構いません。その代わり、鏡面反射をしっかり設定してください。

現在のスペキュラは、本来の目的から離れて「異方性」、「布」、「髪の毛(これはヘアマテリアルの中で使います)」等の「特殊効果」を表現するために使います。

 

まず、「スペキュラのみ」のマテリアルと「鏡面反射のみ」のマテリアルを比較すると、スペキュラのみのマテリアルにはその他のオブジェクトが、鏡面反射のみのマテリアルにはライトが映り込んでいないことがわかります。

図026-7a、b

左はスペキュラのみのマテリアル(フレーム21)。右は鏡面反射のみのマテリアル(フレーム22)。

これは、30年前の流儀が現在もデフォルトとして残っているからです。ライトは光を放射するにもかかわらず、カメラからも鏡面反射からも見えなくなっていて、ただスペキュラだけに反応します。

この問題は、ライトに可視光線を適用したり、ライトの位置に発光するマテリアルを置くことで簡単に解決できます。

こうすると、鏡面反射のみのマテリアルにもライトが写り込むので、もうスペキュラは要りません。

図026-8a、b

左はスペキュラのみのマテリアル(フレーム21)。右は鏡面反射のみのマテリアル(フレーム24)。

 

ところが、異方性などの特殊効果を使うと話が違ってきます。

異方性を計算するために鏡面反射に表面粗さをかけると、現在のコンピューターでも計算がかなり重くなります。

また、ライトの位置に非常に明るく発光するマテリアルを置いて、グラデーションを調整する必要があり、これはシーンに存在するマテリアル全てに影響します。

また、強い光がマテリアル内部に入った時に生じる回折や干渉(猫目石や真珠などのマテリアルで生じる)現象は単純な鏡面反射では再現できません。

このような特殊な状況では、スペキュラを併用した方が設定が楽で、計算が速く、きれいな絵ができます。

ただし、あくまでもメインは鏡面反射で、スペキュラは補助です。つまり、鏡面反射だけで最低限の絵ができるように設定し、足りない部分をスペキュラで補うわけです。

鏡面反射の設定が足りなかったり(ライトが鏡面反射しない等)、不正確であれば(フレネルがかかっていない等)、スペキュラをどう変えてもリアルな絵はできません。

図026-9a、b

左はスペキュラを含むマテリアル(フレーム7)。右は鏡面反射のみのマテリアル(フレーム25)。

スペキュラを細かくコントロールすると、布のような規則的な構造を持ったマテリアルや、メタリック塗装のように何層にも重なったマテリアルをリアルに表現できます。

図026-10a、b

左は布のマテリアル(フレーム27)。右はメタリック塗装のマテリアル(フレーム28)。

 

 

R16 マテリアル基礎03- 凹凸

R16 マテリアル基礎

レベル/ 対象者:基礎/CINEMA 4Dを少し使える人。
対象ソフトウエア、プラグイン:CINEMA 4D R16
 
冨士 俊雄/ gtofuji@gmail.com
章番号 題名 内容、及び関連する章 作成日/注記
027 3_凹凸   2015.5.19

Step 1

はじめに

 この章では、マテリアルの色ではなく凹凸を表現する機能について説明します。

 CINEMA 4Dのマテリアルには、凹凸を表現する機能が「バンプ」、「法線」、「変位」と三種類もあります。これらにはそれぞれ長所と短所があるので、状況に応じて適切な機能を使うようにしてください。

 オブジェクトの凸凹は、基本的にモデリングするものですが、「細かすぎる場合」や「アニメーションさせたい場合」はマテリアルで表現します。

 

1. バンプ
 バンプは、最も古くからある機能で、グレースケール画像を使ってマテリアル表面の「見た目の凸凹」を表現します。オブジェクトの形状は全く変化しません。
 簡単に細かい凸凹を表現できるので現在でもよく使います。

  図027-1a、b
サンプル027a
左はバンプを適用したマテリアル(フレーム1)。右は元になるバンプテクスチャ。

 

2. 法線
 法線は、バンプを拡張した機能で、RGB画像を使ってマテリアル表面の「見た目の凹凸」をより正確に表現します。オブジェクトの形状は全く変化しません。
 ただし、法線チャンネル用のテクスチャを作るのが面倒なので、ほとんど使いません。

  図027-2a、b
左は法線を適用したマテリアル(フレーム2)。右は元になる法線テクスチャ。

 

3. 変位
 変位は、バンプや法線と異なりオブジェクトの表面に「本当の凸凹」を作る機能です。
 オブジェクトを細かく分割する必要があり、重いですが、その分リアルなオブジェクトを表現できます。

  図027-3a、b
左は変位を適用したマテリアル(フレーム3)。右は元になる変位テクスチャ(バンプテクスチャと同じ)。

 

 

Step 2

バンプ

 木目、革や紙等細かくてランダムな凸凹は、ノイズシェーダや実写画像をバンプに適用することで十分に表現できます。

 複雑な形状のオブジェクトに細かくてランダムな実写画像を貼る場合、「立方体」投影を使うときれいに貼れます。
 また、ノイズシェーダを使うとつなぎ目や繰り返しのないテクスチャを表現できます。

  図027-4a、b
左はノイズシェーダをバンプに適用したマテリアル(フレーム4)。右はシェーダのプレビュー。

 

  図027-5a、b
左は皮の画像をバンプに適用したマテリアル(フレーム5)。右は元になる画像。

 

 

Step 3

法線

 法線は、少ないポリゴン数でリアルな外観を表現できるので、ゲームの世界で多用されています。
 しかし、法線を使うには実際に凸凹をモデリングする必要があり、CINEMA 4Dならいくらポリゴンが多くてもそのままレンダリングできるので、わざわざCINEMA 4D内部で法線テクスチャに変換することはありません。

 したがって、CINEMA 4Dで法線を使うのは以下のような場合に限られます。

3a. タイルの目地等、既にある法線テクスチャを使える場合。

3b. ZBrush等他のソフトでモデリングした情報を受け取る場合。

 ただし、可能であれば普通にモデリングしたり、変位を使ったほうがいい結果が得られます。

 

法線チャンネル用のテクスチャを作るには、実際にモデリングした凸凹をベースとなるオブジェクトと比較し、その差分を「テクスチャを焼成」タグを使ってRGB画像の形で記録します。

図027_6
サンプル027b
テクスチャを焼成タグを使って法線テクスチャを作る。

 

 

Step 4

変位

 変位チャンネルはマテリアルの機能ですが、「オブジェクトの形状を変える」という意味ではモデリングツールやデフォーマとしての働きも持っています。
 また、モデリングツールやデフォーマの場合と同じように、ポイントを動かして形状を変えるので、ポリゴンの分割数以上に細かい凸凹は表現できません。

 変位も古くからある機能です。昔はオブジェクトを十分細かく分割できず、使える状況が限られていましたが、CPUやOSが64bit化し、メモリーを大量に使えるようになった現在では手軽に使えます。

 変位を使う場合、シェーダであれ実写画像であれ変位テクスチャを用意する必要があります。そして、それをアルファチャンネルに適用すれば、簡単に変位した部分のマテリアルを塗り分けることができます。
 これも変位の利点の一つで、モデリングで形状を作る場合、ある部分のマテリアルを塗り分けるには、また別の作業が必要になります。

 図027-7
変位テクスチャをアルファチャンネルにも適用して、複数のマテリアルを重ねたオブジェクト(サンプル027aのフレーム6)。

 また、変位にはさらに三つのオプションがあります。

3a. 初期の変位は、バンプと同じようにグレースケール画像を使って上下の凸凹だけを表現していました。
 これに対して、現在の変位では法線と同じようにRGB画像を使って斜め方向の凸凹を表現できるようになっています。
 ただし、これも実際に凸凹をモデリングして差分を取る必要があり、面倒なのでほとんど使いません。

図027_8
サンプル027c
テクスチャを焼成タグを使って変位テクスチャを作る。

 

3b. 初期の変位は、オブジェクトのポイントをそのまま変位していました。
 これに対して、現在の変位にはレンダラーの内部でポリゴンを細分化する機能があります。
 これは「SPD(サブ・ポリゴン・ディスプレイスメント)」と呼ばれ、より多くのポリゴンを軽く扱えるのですが、バグが多いので使わないことをお勧めします。
 その代わり、SDS(サブ・ディビジョン・サーフェイス)で同じことができます。

  図027-9a、b
サンプル027d
左は元になる粗いオブジェクト。右は変位テクスチャ。

 

    図027-10a、b
左はSPDを使って細分化したオブジェクト(フレーム1)。右はSPDの代わりにSDSを使って細分化したオブジェクト(フレーム2)。

 

3c. 初期の変位は、マテリアルのチャンネルでだけ使えました。
 これに対して、現在の変位はデフォーマの中でも使えます。

 デフォーマには、「エディターで変形を確認できる」、「減衰機能を使える」、「XPressoで操作できる」等いろいろな利点があるので、現在ではほとんどの場合デフォーマの中で変位を使います。

 図027-11
SDSで細分化し、変位デフォーマで変形させたオブジェクト(フレーム3)。

 

 変位デフォーマにはSPDがないので、代わりに「SDS(サブディビジョンサーフェイス)」を使います。
 SDSはエディターとレンダラーで異なった分割数を指定できますが、レンダラーで細かめに分割しておくとSPDと同じように軽く多くのポリゴンを扱えます。

 また、変位デフォーマにはRGBの変位テクスチャを使うモードがないので、3a.の機能を使いたい場合は変位チャンネルを使うようにしてください。

 また、MoGraphの「シェーダ」イフェクターをデフォーマモード(ポイント)にすると、変位デフォーマと同じように使えます。
 シェーダイフェクターを使うと、「ディレイ」イフェクター等他のイフェクターの効果を重ねることができます。

 

R16 マテリアル基礎04- SSS:内部拡散反射

R16 マテリアル基礎

レベル/ 対象者:基礎/CINEMA 4Dを少し使える人。
対象ソフトウエア、プラグイン:CINEMA 4D R16
冨士 俊雄/ gtofuji@gmail.com
章番号 題名 内容、及び関連する章 作成日/注記
028 4_特殊効果 2015.5.13

Step 1

SSS:内部拡散反射

 内部拡散反射は、発光チャンネルの中で使う特殊効果シェーダです。ただし、独立したチャンネルと同じぐらい重要です。

内部拡散反射は、基本的にはカラーチャンネルと同じように働きます。つまり、外部から来た光を「ランダムに反射」します。したがって、反射される光は外部から来た光の色や強度に影響され、光が来なければ何も見えません。

内部拡散反射とカラーチャンネルの違いは、カラーチャンネルが光を外側にしか反射しないのに対して、内部拡散反射では一部の光を内部に透過し、内部でもランダムに反射することです。

そういう意味では、ぼけた屈折と鏡面反射を組み合わせて似たような表現をすることもできますが、内部拡散反射の方がずっと軽くきれいに表現できます。

この性質は非常に一般的で、実は金属以外の全ての物質は多かれ少なかれ内部拡散反射を持っています。私たち人間の体や、木材、布、プラスチック、セラミック等、薄くして強い光を後ろに置くと光が透けて見えるのが判ります。

特に内部拡散反射が多い人間の体やワックス、真珠等はこの効果を使わないとリアルに表現できません。

図028-1a、b

サンプル028a

左は内部拡散反射を指定したワックス(ロウ)のようなマテリアル(フレーム1)。右はそれをロウソクで照明した例(フレーム2)。

 

また、GIを使えば発光するマテリアルで内部拡散反射を表現することもできます。

 図028-2

フレーム3。

 

また、内部拡散反射をベースに、見る角度によって色が変わる複雑な鏡面反射を重ねれば真珠のマテリアルを表現できます。

 図028-3

フレーム4。

 

 

Step 2

背後からの照明

  背後からの照明は、発光チャンネルの中で使う特殊効果シェーダで、内部拡散反射に似ています。違うのは「内部」があるかないかです。

つまり、背後からの照明には内部がなく、すぐ裏側に「ランダムに反射」してしまうのです。

内部があるかないかという点で、内部拡散反射は閉じたオブジェクト(立体)に適用するマテリアルで、背後からの照明は開いたオブジェクト(平面)に適用するマテリアルだといえます。

実際、内部拡散反射を開いたオブジェクトに適用しても働きません。また、背後からの照明を閉じたオブジェクトに適用すると、前の面が後ろの面の影になります。つまり、正常に働きません。

例えば、ランプシェードのようにライトの周囲に置く開いたオブジェクトで、ライトからの光や影を裏側に出したい場合には背後からの照明を使うといいでしょう。

  図028-4a、b

左はカラーチャンネルのみのマテリアルを適用したランプシェード(フレーム5)。右は同じマテリアルの発光チャンネルに背後からの照明を追加した(フレーム6)。

ただし、背後からの照明は古い機能なのでGIに対応していません。GIの光を裏側に出したい場合はオブジェクトに厚みをつけ、内部拡散反射を使ってください。

 

 

Step 3

アルファ

 アルファチャンネルは、マテリアル全体に働くマスクで、使い方はPhotoshopのアルファチャンネルと同じです。

アルファを使うと複数のマテリアルを重ねられるので、非常によく使います。

下のマテリアルでは、ノイズシェーダをアルファチャンネルに適用してメタルペイントをランダムにはがし、アルミの上に重ねてあります。

図028-5

フレーム54。

 

さらに、下のマテリアルではオブジェクトの角だけをハゲさせるために、まず角のエッジを選択し、スプライン化しました。

次に、特殊効果の「プロクシマル」シェーダを使ってこのスプラインの周辺にマスクを生成し、ノイズで形をランダムにしました。

図028-6

フレーム51。

 

さらに、下のマテリアルでは中央の球体に突起を追加し、特殊効果の「アンビエントオクルージョン」シェーダを使って突起の先端にマスクを生成し、ノイズで形をランダムにしています。

図028-7

フレーム52。

 

 

Step 4

その他のチャンネル

1. 拡散

拡散チャンネルは、「カラー」、「発光」、「スペキュラ」、「鏡面反射」の4種類のチャンネルに働くマスクです。例えば、マテリアルの表面がハゲたり、サビたりすると、これらの性質が同時に失われます。

拡散がなくても、各チャンネルに同じテクスチャを入れれば同じマテリアルを表現できますし、実際R7まで拡散チャンネルはありませんでした。しかし拡散チャンネルを使えば、一枚のテクスチャでこのような表現ができます。

基本的なチャンネルではありませんが、マテリアルの微調整によく使います。

ただし、拡散チャンネルでマスクすると単に黒くなるだけで、その部分に下のマテリアルやサビのマテリアルを見せることができません。

したがって、明確にハゲやサビを表現したい場合は、同じマスクをアルファチャンネルに入れて別のマテリアルの上に重ねてください。

 図028-8

フレーム53。

 

2. 環境

環境チャンネルは、「鏡面反射」の代用品で、そういう意味では「スペキュラ」に似ています。

スペキュラはライトだけを「規則的に反射」しますが、環境は光の計算を全くせず、カメラの位置に合わせてそれらしく環境テクスチャを貼ります。

現在フォトリアルな絵を作るために環境を使うことは全くありませんが、次のようなケースではよく使います。

2a. モデリングの際にオブジェクトの形状を確認する。

図028_9

サンプル028b

 

2b. フライングロゴ等で、絵をシンプルにするために使う。

鏡面反射を使うと、周囲のオブジェクトが映り込んで読みにくくなる。

図028-10a、b

サンプル028c

左は環境で鏡面反射を表現したマテリアル(フレーム1)。右は普通に鏡面反射を使ったマテリアル(フレーム2)。

 

3. 霧

霧チャンネルは、オブジェクトの内部に霧を発生させます。この霧は環境オブジェクトの中にある霧と同じで、距離によって指定した色を他のオブジェクトのマテリアルに重ねます。

20年前まではよく使いましたが、濃度に変化をつけられないとか、透明なマテリアルをうまく扱えないなどの問題があり、現在では全く使いません。

霧を作りたい場合は、PyroClusterやサードパーティー製のボリュームシェーダーを使うようにしてください。

 

4. グロー

グローチャンネルは、3Dではなく2Dのポストイフェクトで、オブジェクトの周囲に光をにじませることができます。

15年前まではよく使いましたが、透過や鏡面反射に対応していない等の問題があり、現在では全く使いません。

グローをかけたい場合は、特殊効果の「グロー」や、サードパーティー製の3Dグローを使うようにしてください。

 

アニメーション基礎01: 4種類のアニメーション

アニメーション基礎

レベル/ 対象者:中級/ MoGraphをある程度使える人
対象ソフトウエア、プラグイン:CINEMA 4D R14 Broadcast以上
冨士 俊雄/ gtofuji@gmail.com
章番号 題名 内容、及び関連する章やサンプルファイル 作成日/注記
201 1_4種類のアニメーション 2015.3.26

 

Step 1

はじめに

  CINEMA 4Dには多くのアニメーション機能があります。もちろん伝統的なキーフレームを使ったアニメーションも作れますが、以下のような理由からキーフレームだけでアニメーションを作ることは現在ほとんどありません。 

1. 複雑な動きを表現できない。

複数のオブジェクトが衝突したり連動するアニメーションで、一個一個のオブジェクトにキーを打つのは不可能です。

2. 多数のオブジェクトを動かせない。

オブジェクトが100個を超える場合、キーで動かすのは困難です。

3. 修正が難しい。

キーフレームアニメーションでは必然的にキーが多くなり、修正が難しくなります。

そこで、この講座ではキーフレームアニメーションとCINEMA 4Dのアニメーションを比較し、その違いについて詳しく説明します。

 

 

Step 2

4種類のアニメーション

  まず4種類の方法を使ってオブジェクトを動かし、その利点と欠点について考えてみましょう。1. オブジェクトの「位置」に直接キーを打って動かすアニメーション。

キーフレームアニメーションは簡単で、他のソフトとデータのやり取りができる、という利点があります。

しかし、複雑な動きをつけるにはキーを増やすしかなく、どんどん重くなり、編集も困難になります。

図201-2a

説明ムービー

サンプルファイル

 

2. オブジェクトをスプライン(パス)に乗せ、「スプライン上の位置」にキーを打って動かすアニメーション。

CINEMA 4Dで一番よく使われるのが、スプラインを使ったアニメーションです。

スプラインを使えば、複雑な動きでも二つのキーでコントロールできます。また、スプラインに沿ってオブジェクトを作ったり、デフォーマで変形させたり、スプラインそのものをデフォーマで変形させたりと、他の多くの機能を組み合わせることができます。

作業的には一手間増えますが、難しいというほどではありません。

図201-2b

説明ムービー

サンプルファイル

 

3. MoGraphオブジェクトにイフェクターを適用し、「イフェクターの値」にキーを打って動かすアニメーション。

多数のオブジェクトをいろいろなルールにしたがって動かす機能がMoGraphです。MoGraphを使えば、オブジェクトの数に関係なく数個のキーで複雑なアニメーションを作れます。

MoGraphは非常によくできていて、初心者が簡単に使うことも、上級者が難しく使うこともできます。また、Alembicを使えば、他のソフトにデータを移すこともできます。

図201-2c

説明ムービー

サンプルファイル

 

4. オブジェクトにユーザーデータとXPressoを適用し、「ユーザーデータ」にキーを打って動かすアニメーション。もしくは、キーフレームの代わりに「条件」を使って動かすアニメーション。

エクスプレッションは最も強力なアニメーション機能です。確かにエクスプレッションを作るのは難しく、面倒ですが、それ以上に作業を効率化し、不可能を可能にしてくれます。

図201-2d

サンプルファイル

 

 

 

Step 3

キーとタイムラインの扱い

  キーフレームアニメーションは単純で、CINEMA 4Dでも他のソフトと同じように作れます。ただし、インターフェイスはソフトごとに違っているので、ここでは、CINEMA 4Dでキーフレームアニメーションを作る際の流れを説明します。まず、キーはオブジェクトの属性マネージャーでパラメーター名の右にあるボタンをクリックして打ちます。キーを削除したい場合は、もう一度クリックします。トラックごと削除したい場合は、control+shift+クリックします。

オブジェクトの属性マネージャは、基本的に「現在の値」を表示、記録する場所なので、キーは必ず現在タイムマーカーがある時点に作成されます。もし、既にその時点にキーがある場合は上書きされます。

キーを打つと、自動的にキーの間が補間されます。デフォルトの補間方法はプロジェクト設定で指定できます。もちろん後で個別に補間方法を変更することもできます。

エディターの下にはタイムマネージャという横長のウインドウがあります。これは一行だけの簡易版タイムラインで、ここでもキーを選択したり、動かしたり、削除できます。

タイムマネージャでキーを選択すると、アニメーションの属性マネージャにそのキーの時点と値が表示されます。また、キーの補間方法やイーズイン、イーズアウトも編集できます。

次にタイムラインに移ります。タイムラインで直接キーを打つこともできますが、ある程度属性マネージャーでアニメーションを作成し、その後タイムラインでタイミングやイーズイン、イーズアウトを微調整する、という使い方が楽だと思います。

タイムラインには、二つの表示モードがあります。基本的にどちらのモードでも全てのパラメーターを編集できますが、キーモードはキーのタイミングを編集したい場合に、Fカーブモードはキーの間の変化を編集したい場合に使います。

タイムラインでキーを選択すると、アニメーションの属性マネージャにキーの時点と値が表示されます。これはタイムマネージャで選択した場合と同じです。また、トラックを選択すると、トラックのパラメータが表示され、アニメーションの繰り返しや、タイムコントロールを編集できます。

この他、タイムラインには表示や選択に関するいくつかの機能があります。例えば、タイムラインのデフォルトは自動モードですが、オブジェクトをドラッグアンドドロップすると手動モードに切り替わります。

また、オブジェクトマネージャとタイムラインの表示や選択は、デフォルトではリンクしていませんが、オプションでリンクできます。

CINEMA 4Dでは、AfterEffects等と違って位置や回転のXYZの値が独立しています。これは、独立していた方がエクスプレッション等で扱いやすいからです。XYZの値を一体で扱いたい場合は、次のステップで説明するスプラインを使うようにしてください。

図201-3

 

アニメーション基礎02: スプライン

アニメーション基礎

レベル/ 対象者:中級/ MoGraphをある程度使える人
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冨士 俊雄/ gtofuji@gmail.com
章番号 題名 内容、及び関連する章やサンプルファイル 作成日/注記
202 2_スプライン 2015.3.26

Step 1

スイープとレール

 スプラインは太さがないので、そのままでは目に見えません。しかし、スイープを使えば立体化できます。

スイープを使うと、単にオブジェクトを作るだけではなく、ねじったり成長させることもできます。

また、スイープオブジェクトに沿ってマテリアルの色を変えたり、テクスチャを流すこともできます。

図202-1a

説明ムービー

サンプルファイル

 

さらに、スプラインに沿ってオブジェクトを動かすこともできます。スプラインに沿ってオブジェクトを動かすには「スプラインに沿う」タグを使います。オブジェクトの向きをコントロールするには、二本のスプラインを使います。この時、メインのスプラインを「パス」、ガイドのスプラインを「レール」と呼びます。

スプラインに沿ってオブジェクトを動かす場合、スプライン上の位置を0から100%の間の値で指定します。また、スプラインのポイント密度や曲率に関係なくオブジェクの速度を一定に保ちたい場合は、スプラインの補間法を「均等」にします。

図202-1b

 

 

Step 2

スプラインに沿って並べる

 スプラインに沿って多数のオブジェクトを動かしたい場合、ステップ2で説明した「スプラインに沿う」を使う方法では大変です。このような場合もMoGraphのクローナーを使います。

図202-2

説明ムービー

サンプルファイル

 

 

Step 3

スプラインに沿って変形させる

 スプラインラップデフォーマを使うと、スプラインに沿ってオブジェクトを変形できます。

「スプラインラップ」の使い方は「スプラインに沿う」に似ていて、レールスプラインでオブジェクトの向きをコントロールできます。また、長さの扱いや、スプラインの端での扱いを指定できます。

図202-3

説明ムービー

サンプルファイル

 

 

Step 4

スプラインを変形させる

  デフォーマを使うと、スプラインを変形できます。そして、そのスプラインが他のアニメーションのガイドになっている場合、他のアニメーションも変形します。

図202-4

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サンプルファイル

 

アニメーション基礎03: MoGraph

アニメーション基礎

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冨士 俊雄/ gtofuji@gmail.com
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203 3_MoGraph 2015.3.26

Step 1

MoGraphカラーシェーダー

  MoGraphのアニメーションについては、「MoGraph基礎」の講習会である程度説明しています。そこで、この章では、MoGraph基礎で説明しきれなかった機能について重点的に説明します。

MoGraphにはクローンのカラーをコントロールする機能があります。ただし、この「カラー」はカラーチャンネルのカラーであって、発光チャンネルや透過チャンネルのカラーではありません。
ところが、MoGraphカラーシェーダーを使うと、クローンのカラーを使って発光チャンネルや透過チャンネルのカラーを変えられるようになります。

ここでは、一番簡単な例として発光と透過チャンネルのカラーを変えますが、クローンのカラーを使って変異やアルファチャンネルなど特殊なチャンネルをコントロールすれば、非常に面白い表現ができるはずです。

図203-1a

説明ムービー

サンプルファイル

 

図203-1b

説明ムービー

 

 

Step 2

MoGraphマルチシェーダー

 MoGraphマルチシェーダーは、クローンに多数のテクスチャを貼るためのシェーダーです。

クローンにテクスチャを割り当てるためのルールとしては、「ランダム」と「順番」、「カラー」があります。

ランダムに貼る場合は、ランダムイフェクターを使ってクローンのカラーをランダムに変えます。
順番に貼る場合は、直接貼るか、ステップイフェクターを使ってクローンのカラーを順番に変えます。
カラーで貼る場合は、シェーダーイフェクターで写真等を使ってクローンのカラーを変えます。

順番は規則的なテクスチャを貼る場合、カラーはモザイクやコラージュのような絵画的な表現をする場合によく使われます。ただし、これはあくまでも例であって、工夫次第でもっといろんなことができるはずです。

ここでは、順番の例としてトランプを作ってみましょう。
まずマテリアルを作成し、マルチシェーダーにトランプのテクスチャ52枚を読み込みます。
次に、トランプオブジェクトを作成し、クローナーを使って13行4列に並べます。

さらに、トランプをまとめた状態を作成し、継承イフェクターでトランプを配るアニメーションを作ってみましょう。MoGraphを活用すると、このアニメーションをたった2個のキーフレームで表現できます。

図203-2a

説明ムービー

サンプルファイル

 

次に、ランダムイフェクターや簡易イフェクターを使ってテクスチャを差し替えるサンプルを作ります。
ここでは、数字のテクスチャを使いました。

図203-2b

説明ムービー

 

図203-2c

説明ムービー

 

 

Step 3

複数のMoGraphオブジェクトやイフェクタを重ねる

 MoGraphオブジェクト(クローナー等)はいくらでも重ねられます。また、MoGraphイフェクターもいくらでも重ねられます。簡単なシーンでも2〜3個、複雑なシーンの場合は10個程度重ねることもあります。

MoGraphオブジェクトを重ねるには、単に階層化します。この考え方は、スイープやデフォーマ等従来のCINEMA 4Dオブジェクトと同じです。

MoGraphイフェクタを重ねるには、MoGraphオブジェクトを選択した状態でイフェクタを生成します。この時、イフェクタをかける順番によって効果が変わるので注意してください。
また、MoGraphイフェクターの名前には、必ず「順番」、「適用オブジェクト」、「働き」等を追加してください。そのままだとすぐに判らなくなります。
また、イフェクタそのものはMoGraphオブジェクトで複製できないので、必ず階層の外に出すようにしてください。

図203-3

説明ムービー

サンプルファイル

 

 

Step 4

ディレイイフェクタで余韻をつける

 MoGraphイフェクターの中には、「他のイフェクターの働きにイフェクトをかける」という特殊な働きを持ったものもあります。それがディレイイフェクターです。
ディレイイフェクターは、他のイフェクターの効果に「遅れ」や「余韻」、「オーバーシュート」を追加します。ディレイイフェクターは一種の隠し味なので、あらゆるシーンで使えます。

ディレイイフェクターを使う時は特に順番に注意してください。ディレイイフェクターは、他のイフェクターにイフェクトをかける機能なので、他のイフェクターの後に置かないと働きません。

図203-4

説明ムービー

サンプルファイル

 

アニメーション基礎04: XPresso

アニメーション基礎

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章番号 題名 内容、及び関連する章やサンプルファイル 作成日/注記
204 4_XPresso 2015.3.26

 

Step 1

オブジェクトを連動させる

 第1章では、比較のためにキーフレームでも作れるアニメーションをXPressoに置き換えました。しかし、XPressoが真価を発揮するのは、キーフレームでは難しい動きや、不可能な動きを作る場合です。この章では、そのような例についていくつか説明します。

まず、XPressoがよく使われるのはオブジェクトを連動させる場合です。例えば自動車が走る時、それに連動してタイヤが回転します。この二つの動きを別々にキーフレームで作ることは、不可能ではありませんが非常に面倒です。

このような場合、XPressoを使ってタイヤの回転を自動車の動きに連動しておくと、アニメーションの編集が非常に楽になります。

図204-1a

説明ムービー

サンプルファイル

 

さらに、キャタピラも作ってみましょう。大したことはありません。

キャタピラはMoGraphオブジェクトで作成し、タイヤの回転の代わりにオフセットの値を変えます。

図204-1b

説明ムービー

 

最後に、現在のXPressoの作りでは、自動車の進行方向に関係なくタイヤやキャタピラが一方向に動いてしまいます。これは、自動車の向きと進行方向を「内積」という機能を使って比較することで解決できます。

図204-1c

 

 

Step 2

衝突した場所からThinkingParticlesを出す

 MoGraphマルチシェーダーは、クローンに多数のテクスチャを貼るためのシェーダーです。クローンにテクスチャを割り当てるためのルールとしては、「ランダム」と「順番」、「カラー」があります。

ランダムに貼る場合は、ランダムイフェクターを使ってクローンのカラーをランダムに変えます。

順番に貼る場合は、直接貼るか、ステップイフェクターを使ってクローンのカラーを順番に変えます。

カラーで貼る場合は、シェーダーイフェクターで写真等を使ってクローンのカラーを変えます。

順番は規則的なテクスチャを貼る場合、カラーはモザイクやコラージュのような絵画的な表現をする場合によく使われます。ただし、これはあくまでも例であって、工夫次第でもっといろんなことができるはずです。

ここでは、順番の例としてトランプを作ってみましょう。

まずマテリアルを作成し、マルチシェーダーにトランプのテクスチャ52枚を読み込みます。

次に、トランプオブジェクトを作成し、クローナーを使って13行4列に並べます。

さらに、トランプをまとめた状態を作成し、継承イフェクターでトランプを配るアニメーションを作ってみましょう。MoGraphを活用すると、このアニメーションをたった2個のキーフレームで表現できます。

図204-2a

説明ムービー

サンプルファイル

 

次に、ランダムイフェクターや簡易イフェクターを使ってテクスチャを差し替えるサンプルを作ります。

ここでは、数字のテクスチャを使いました。

図204-2b

 

図204-2c

 

 

R16用GI基礎01: 関連する機能

gi_title

R16 GI基礎

レベル/ 対象者:基礎/CINEMA 4Dを少し使えて、GIの設定に困っている人
対象ソフトウエア、プラグイン:CINEMA 4D R16 Broadcast以上
冨士 俊雄/ gtofuji@gmail.com
章番号 題名 内容、及び関連する章やサンプルファイル 作成日/注記
071 1_関連する機能 オブジェクトバッファ、マスク、アルファチャンネル、コンポジットタグ、マルチパス、レイヤ、シングルパス、屈折コースティクス、反射コースティクス、シンプルな背景、グラデーションシェーダ、GIから見える、カメラから見える、鏡面反射/屈折から見える、AO、アンビエントオクルージョン、透過を考慮、GIアニメーションの設定 2015.1.24
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Step 1

初めに

 CINEMA 4D R7でGI(グローバルイルミネーション、間接照明を表現する機能)が登場して10年以上経ちました。GIが出た当初はコンピュータが非力で、またGIの機能も十分でなかったため、なかなか仕事で使う機会はありませんでした。しかし現在では設定もレンダリングも簡単になり、私はアニメーションを含めてほとんどの仕事でGIを使っています。とは言っても世の中全体を見渡せば、まだまだ「GIは難しい」、「GIは遅い」と言っている人がたくさんいます。それにはおそらく二つ原因があります。

1. ソフトが悪い

確かに現在でもGIを使えない3DCGソフトがあります。またGI機能があっても、とても実用的とはいえないソフトもあります。しかし、CINEMA 4DのGI機能はR12以降十分実用的です。安心して使って下さい。

2. ユーザが悪い

GIは魔法ではありません。CADソフトから軸もUV座標もないポリゴンの塊を読み込んで、GIをかければすぐにフォトリアルな絵ができる、というような簡単なものではありません。

むしろ、GIはシーンをよりリアルにレンダリングするので、「構図、絵作り」、「照明、カメラ」、「背景、環境」、「マテリアル、アニメーション」、「モデリング、テクスチャ」、「レンダリング設定、コンポジット設定」などあらゆる段階で従来以上に丁寧な作業が必要になります。フォトリアルな絵は、それらの作業の結果です。

この講座では、GIの使い方について、サンプルを使って具体的に説明します。また後半では、TeamRenderを使ったGIアニメーションのレンダリングについて説明します。

最後に、コンピュータのパワー(計算速度)についてお話ししておきます。よく「GIが遅いのはコンピュータが遅いから」とか、「GIの計算には速いコンピュータが必要」という人がいます。これは間違いではありませんが、あまり意味がありません。

1. GIの設定が悪ければ、どんなに速いコンピュータを持ってきてもいい絵はできません。一番重要なのは、コンピュータのパワーではなくGIの設定です。

2. どんなに速いコンピュータを持ってきても、一台でGIのアニメーションをレンダリングするのは無理です。仕事の規模に応じて適切なネットワークレンダリング(NETやTeamRender)を組む必要があります。小さなコンピュータでもたくさん集まれば強力なネットワークレンダリングを構築できます。

 

 

Step 2

オブジェクトバッファ

 それでは、早速サンプルを開いてレンダリングしてみましょう(サンプル071a)。

図071-1

  レンダリング時間は「21秒」でした。このファイルは「R16 照明基礎」で使ったサンプルファイルを拡張したものです。これをベースにして、照明基礎では説明できなかった細かい設定について、この章と次の章で説明していきます。

まず、多くの仕事では後で行う合成の過程で、背景の全て、もしくは一部をマスクする必要があります。

そして、昔は「背景を置かずにアルファチャンネルを出す」という簡単な方法でマスクを取り出していました。しかしGIを使う場合、自然な照明や映り込みを表現するために全ての方向に背景(環境)を置く必要があります。つまり、そのままではアルファチャンネルを取り出せません。

このような場合、コンポジットタグを使えば背景をカメラから不可視にしてアルファチャンネルを取り出すことができます。しかしアルファチャンネルには「一枚しか取り出せない」、「空オブジェクトを抜けない」等の制約があるので、現在ではほとんど使いません。その代わりに「オブジェクトバッファ」という機能を使います。

オブジェクトバッファは、「指定したオブジェクトに対してマスクを付ける」という機能で、何枚でも作れます。空オブジェクトに関する制約もありません。また、指定したオブジェクトが屈折して見える部分にもマスクを付けてくれます(鏡面反射して見える部分には付きません)。

 

それではオブジェクトバッファを指定します。

図071-2

オブジェクトバッファを指定するには、まずマスクを付けたいオブジェクトに「コンポジット」タグを適用し、マスクのID(番号)を指定します。

次に、レンダリング設定でマルチパス機能を選択し、「オブジェクトバッファ」レイヤを追加し、コンポジットタグで指定したIDを入力します。一つのオブジェクトに複数のIDを付けることもできます。また、複数のマスクを出したい場合は、必要な数だけオブジェクトバッファレイヤを追加します。

レンダリングが終わったら、画像表示ウインドウの表示を「レイヤ」に切り替え、表示方法を「シングルパス」に設定します。この状態でRGBやマスクのプレビューをクリックすると、そのチャンネルだけが表示されます。

また、マルチパス機能を選択すると「レンダリング設定 -> 出力」ページにマルチパス画像の「名前」や「フォーマット」を指定する部分が表示されます。

 

Step 3

コースティクス

 次に、コースティクスについて説明します。コースティクスはマイナーな機能で、普通ほとんど気にする必要はありません。しかし、このサンプルはコントラストが高いHDR画像を背景に使っているため、建物の周囲のプールの中に「屈折コースティクス」による問題が生じています。修正しなければなりません。 図071-3まず屈折コースティクス機能そのものについて説明します。屈折コースティクスを使うと、GIの計算でマテリアルの「屈折」が正しく評価されます。下の図071-4aは屈折コースティクスあり、図071-4bは屈折コースティクスなしの絵です(サンプル071c)。

図071-4a

図071-4b

レンダリング時間は、屈折コースティクスを働かせるだけならほとんど変わりません。したがって、この機能はデフォルトで働くようになっています。しかし、きれいな屈折コースティックスを得るには、それなりに設定を上げる必要があります。この場合、屈折コースティックス有りが「168秒」、無しでは「45秒」でした。

上のサンプルぐらいならなんとかレンダリングできますが、さらにコントラストの強いシーンでは計算が難しくなり、ノイズやちらつきの原因となります。このような場合、その屈折コースティクスが絵的に必要であれば、設定を上げてレンダリングするしかありません。しかし、それほど重要でないのなら、屈折コースティクスを切ってしまうのも一つの手です。

それでは、屈折コースティクスを切って絵がどのように変化するか見てみましょう。下の図071-5aは屈折コースティクスあり、図071-5bは屈折コースティクスなしの絵です。

図071-5a

図071-5b

 屈折コースティックスを外すと、水がない状態の影ができます。これは不自然ですが、ノイズはなくなります。どちらがいいかは絵を見て判断するしかありません。

ちなみに、設定を上げると静止画として使える程度の絵を作ることができます。しかし、アニメーションにすると、やはりちらつくだろうと思います。レンダリング時間は「205秒」でした。

図071-6

 

コースティクスにはもう一つ「反射コースティクス」という機能があります。これは屈折コースティクスと似た機能で、GIの計算でマテリアルの「鏡面反射」が正しく評価されます。しかし、この機能は屈折コースティクスより計算が難しく、ノイズも目立つのでデフォルトでは働かないようになっています。下の図071-7aは反射コースティクスあり、図071-7bは反射コースティクスなしの絵です。

図071-7a

図071-7b

 金属の鏡面反射を特に強調したいような場合にのみ、覚悟して使うといいでしょう。レンダリング時間は、反射コースティックス有りが「129秒」、無しが「32秒」でした(サンプル071c2)。

 

Step 4

シンプルな背景

 次に、空オブジェクトにグラデーションシェーダを適用したシンプルな環境(背景)について説明します。「R16 照明基礎」ではIBL(イメージベースドライティング、画像を使った背景)について説明しましたが、リアルな写真よりもシンプルな背景を使った方が判りやすい絵を作れる場合がよくあります。例えば、機械やプロダクトの仕事で部品だけの絵やカットモデルを作る場合などです。また、建築や内装の仕事でも、カットモデルや天井を省略した絵を作る場合、環境はシンプルな方が適しています。その他、シンプルな背景は、GIの設定が簡単でレンダリングも速いので、制作途中のオブジェクトやマテリアルのチェックにもよく使います。それではシンプルな背景を作ってみましょう。

図071-8

 まず新規マテリアルを作成し、発光チャンネルにグラデーションシェーダを追加します。そして、グラデーションの向きを縦に変更し、適当なグラデーションを指定します。これを空オブジェクトに適用すれば、シンプルな背景が完成です。

ただし、シンプルすぎて立体感や構造がよくわからない絵になってしまいました。そこで、空オブジェクトを回転させ、照明を偏らせます。また、「床」オブジェクトを追加し、下から来る光を制限します。

これで少しよくなりました。床オブジェクトを追加する場合は、空オブジェクトに適用したオブジェクトバッファと同じIDのオブジェクトバッファを適用することを忘れないで下さい。

次に、マスクを作っておけば背景の色は後からどうにでも変えられます。しかし、背景は白(もしくはある特定の色)と決まっている場合も多いでしょう。そのような場合は、GIの照明に使う背景とレンダリングする背景を分けることによって、背景を合成する手間を省けます。

背景の表示を切り分けるには「コンポジット」タグを使います。

GIの照明に使う空オブジェクトは、「GIから見える」だけをオンにして他は全て切ります。またレンダリングに使う空オブジェクトは、「カメラから見える」と「鏡面反射/屈折から見える」だけをオンにして、他は全て切ります。また、床オブジェクトは「GIから見える」と「鏡面反射/屈折から見える」だけをオンにして、他は全て切ります(サンプル071d)。

また、あえて背景に極端な色を適用し、オブジェクトの面を強調するような使い方もできます(サンプル071e)。

 

図071-9

 

 

Step 5

アンビエントオクルージョン

 もう一つ、オブジェクトの立体感や構造を強調するための機能として「アンビエントオクルージョン」があります。GIは、間接光を計算してシーン全体を明るくしていくため、ややもすると絵が眠くなりがちです。アンビエントオクルージョン(AO)は、基本的にはGIの機能ではなくマテリアルの性質を変える「シェーダー」ですが、眠くなったGIの絵をシャープにする目的でも使えます。事実上、「GIを使う場合、必ずAOも使う」と考えて差し支えありません。それではAOを追加してみましょう。

図071-10

 オブジェクトの面が内側に折れている部分や目地等が暗い線で強調され、立体感や構造がよりわかりやすくなりました.

下の図071-11aはAO有り、図071-11bはAO無しの絵です(サンプル071f)。

図071-11a

図071-11b

 

AOの基本的な働きは、「周囲を壁に囲まれた、奥まった部分の性質を変える」ことです。普通は、奥まった部分を暗くします。また、AOはマテリアルとレンダリング設定の二カ所で指定できます。

マテリアルに適用したAOは、オブジェクトの色や明るさだけでなく、透明度やバンプ、アルファ等いろいろな性質を変えられます。また、AOの効果が生じるのはそのマテリアルを適用したオブジェクトだけです。

これに対して、レンダリング設定に適用したAOは、オブジェクトの明るさだけを変えます。また、シーン全てのオブジェクトに対して効果が生じます。

AOとGIの計算方法や結果はよく似ていますが、二つの点で異なっています。

1. GIは周囲の照明を調べて計算するが、AOはオブジェクトの形状しか調べない。

つまり、AOはライトや環境を考慮しないので、GIに比べて計算が簡単できれいです。

2. GIは距離の二乗に反比例して光を減衰させるが、AOはグラデーションを使って自由に減衰を指定できる。

つまり、絵作りのための機能としてはAOの方が優れています。

このような理由から、AOをGIの補助として使うわけです。

 

また、「奥まった部分」というのは一般的に汚れがたまりやすく、また風化や劣化しにくいため、表に出ている部分に比べてオブジェクトの色自体が暗く、濃くなっているのが普通です。AOは、照明ではなく、この効果を表現するものだと考えるといいでしょう。実際、AOを強くかけると古ぼけた質感になり、AOを弱くすると新品の質感になります。

最後に、GIの補助としてAOを使う場合は、忘れずに「透過を考慮」オプションを選択してください。AOは本来奥まった部分、つまり「オブジェクトの形状」を調べて値を変えるシェーダです。照明や光は関係ありません。つまり、デフォルトではそのオブジェクトに適用されたマテリアルの透明度やアルファを考慮しないようになっているのです。

確かに、現実世界でもガラスの周囲には汚れがたまります。しかし、アルファで切り抜いた部分にまで汚れがたまるのは明らかに変です。透過を考慮オプションを使うと、透明な部分やアルファで切り抜かれた部分を「形状」に含めないようになります。

下の図071-12aは透過を考慮あり、図071-12bは透過を考慮なしの絵です(サンプル071g)。

図071-12a

図071-12b

 

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R16用GI基礎02: GIの詳細

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R16 GI基礎

レベル/ 対象者:基礎/CINEMA 4Dを少し使えて、GIの設定に困っている人
対象ソフトウエア、プラグイン:CINEMA 4D R16 Broadcast以上
知らない設定はいじらない。
冨士 俊雄/ gtofuji@gmail.com
章番号 題名 内容、及び関連する章やサンプルファイル 作成日/注記
072 2_GIの詳細 しきい値、表面粗さ、QMC、アンチエイリアス、コンポジットタグ、サチュレーション、GIエリアライト、夜景、間接照明、GIエリアを個別サンプリング、全ピクセルでサンプリング、GIの精度、GIの精度、GIアニメーションの設定 2015.2.10
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Step 1

はじめに

  この章の説明は、表面的にはR14用のGI基礎に似ています。しかし以下のような理由から、考え方や実際の値はかなり異なっています。1. R15でGIの計算方法が大きく変わった。2. コンピューターが速くなった。その結果、シーンの編集に時間をかけるよりも、コンピューターのパワーに任せてレンダリングしたほうが速くなってしまいました。3. R13でフィジカルレンダラーが導入された。その結果、アンチエイリアスやAO、鏡面反射や屈折の表面粗さ(R14のぼけた鏡面反射)の設定が簡単になりました。

したがって、CINEMA 4DをR15以降にアップデートした場合は「GIがかなり変わっている」という点に注意してください。また、GIの計算速度に関しては、確実に遅くなっているので、それを覚悟して使うようにしてください。

 

 

Step 2

しきい値

 CINEMA 4Dに限らず、光線の鏡面反射や屈折(レイトレーシング)を計算できる3DCGソフトは、必ず計算を打ち切る機能を持っています。なぜなら、「鏡の部屋」のようなシーンをレンダリングした場合、光が無限に鏡面反射してレンダリングが終わらなくなってしまうからです。計算を打ち切るには、光線が屈折、鏡面反射した回数で切る方法と、光線の明るさで切る方法の二つがあります。回数に関しては、ほとんどの場合デフォルトのままで大丈夫です。しかし、明るさに関しては微妙な調整が必要です。なぜなら、光線が明るいうちに打ち切ると絵がおかしくなるし、暗い光線まで計算するとレンダリング時間が延びてしまうからです。この、光線の計算をどこで打ち切るかを決めるのがしきい値です。それでは、しきい値の値によってどのような問題が起こるか見てみましょう。図072-3

 

下の図072-4aはしきい値が「0.1」の絵、図072-4bはしきい値が「2」の絵です。

図071-4a

図071-4b

 

このように、しきい値の値を大きくしすぎると鏡面反射が突然なくなり、絵がおかしくなるので注意してください。しきい値の値は、まず「1」を基準とし、鏡面反射の問題が発生するようなら、「0.5」ぐらいまで下げることをお勧めします。

 

次に建物の内観を使って画質とレンダリング時間を比較してみます(サンプル072b)。

図072-5

 

上にも書いたように、しきい値はGIだけでなく、鏡面反射、屈折、影、AOなど多くの機能に影響を与えます。そして、その中にはしきい値の影響を受けやすい機能と、受けにくい機能があります。

例えば、壁が白い部屋でGIを計算した場合、反射した間接光はほとんど減衰しません。つまり、しきい値に引っかかるほど暗くならないのです。したがって、この場合しきい値を変えてもレンダリング時間はほとんど変わらず、画質も変わりません。

ところが、白い壁に鏡面反射を追加すると大きな差が出てきます。なぜなら、白い壁の鏡面反射にはフレネル(光線が入射する角度によって反射率が変化する効果)がかかっていて、浅い角度では数%になるからです。つまり、ほとんどの光は2〜3回反射するとしきい値より暗くなります。

したがって、鏡面反射の計算ではしきい値を適切に調整することで、普通は1〜2割、場合によっては3割程度レンダリング時間を短縮できます。

 

 

Step 3

アンチエイリアス

 アンチエイリアスの考え方は、標準レンダラーとフィジカルレンダラーで大きく異なります。標準レンダラーのアンチエイリアスについては、R14用のGI基礎を参照してください。フィジカルレンダラーの場合、アンチエイリアスの設定は非常に簡単で、基本的にデフォルトのままいじる必要はありません。アニメーションでノイズが目立つ場合、値を少し上げることはありますが、静止画の場合は解像度を上げてしまった方がいい結果が得られます。図072-6

 

Step 4

サチュレーション

 次に室内に戻ります。そして、壁や天井を鏡面反射無しのマテリアルに戻し、床の色をオレンジに変えてみましょう。 図072-7床のオレンジが部屋全体に盛大に「色映り」しています。これは決して間違いではないのですが、絵的にはよくありません。理由は、このような環境に置かれると、人間の目は自動的にオレンジを弱めて見るようにできているからです。もちろんレンダリング後に色補正をかけてもいいのですが、そのままだと、床のオレンジまで補正されてしまいます。そこでGIの機能を使って、床のオレンジはそのままに壁の色移りだけを弱くしてみましょう。オレンジのマテリアルの「GIと照明モデル -> GIを生成」の右にある「サチュレーション(彩度)」を下げると、オレンジのマテリアルが生成する間接光の強度はそのままで、彩度だけを下げることができます。これは、物理的には不正な操作ですが、絵作りの機能としては非常に有用です(サンプル072e)。

 

 

Step 5

GIエリアライト

  GIエリアライトは、基本的には発光するマテリアルです。発光するマテリアルは、ライトからの光を受けなくても自ら光を出し、周囲のオブジェクトを照明できます。発光するマテリアルをよく使うのは、テレビの画面、空、照明機器(やそのシェード)等です。発光するマテリアルには多くの利点があります。例えば、面状や線状のライトを簡単に作れる、設定が簡単、計算が速い、絵が自然できれいなどです。したがって、現在面状や線状のライトを作るときにライトオブジェクトは使いません。ただし、発光するマテリアルはライトのような特別な存在ではないので、極端に明るいマテリアルを小さなオブジェクトに適用すると、ノイズが増えてきます。例えば、壁面モニターのような大きなオブジェクトに明るさ100程度の発光するマテリアルを適用する場合、問題はありません。しかし、小さな電球に明るさ1000以上の発光するマテリアルを適用すると、多くの場合ノイズが発生します。GIエリアライトオプションを使うと、この問題を解決できます。GIエリアライトは、言ってみればそのマテリアル(が適用されたオブジェクト)を特別扱いする機能であり、他のオブジェクトにそのオブジェクトを注目させる機能です。マテリアルのGI設定にある「GIエリアライト」オプションをチェックすると、そのマテリアルはGIエイアライトになります。GIエリアライトは、発光するマテリアルに関するオプションなので、発光チャンネルが働いている場合だけ選択できます。

図072-8

 

Step 6

夜景を作る

  基本的に、夜景は昼間のシーンの「環境(背景)」と「照明(ライトオブジェクトや発光するマテリアル)」を変更することで作ります。この時、照明は可能な限り図面通りに配置するようにしてください。また、図面に存在しない照明や、物理的におかしい照明(影のないライトや減衰しないライト)は絶対に置かないようにしてください。夜景は、昼間のシーンに比べてコントラストが高いので、シーンの作成もレンダリングの設定も数倍難しくなります。また計算時間も数倍かかります。そして、このような状況でGIエリアライトの設定が非常に重要になります。特に壁の裏側に照明機器を隠す間接照明は、ほとんどの場合はGIエリアライトで表現します。 図072-9それでは、まず背景を夜にしてレンダリングしてみます。照明を入れていないので、廃墟のような絵になりますが、絵自体はきれいです(サンプル072f)。次に、橋の下と窓の裏に間接照明を入れてレンダリングしてみます。この段階では、まだGIエリアライトオプションは入れていません。つまりただの発光するマテリアルです。

このシーンで間接照明を使った理由は、間接照明の設定が一番難しいからです。間接照明をきれいにレンダリングできるようになれば、その他の照明は全てきれいに表現できるはずです。

次にGIエリアライトオプションを入れてレンダリングしてみます。GIエリアライトオプションを入れると、GIの計算が2倍になるので、レンダリング時間も1.5倍程度長くなります。

しかし、画質はそんなに変わりません。理由は、発光させた部分がそれなりに大きく、それほど明るくなく、裏に隠れていたからです。

条件によりますが、間接照明はGIエリアライトの効果が出にくい照明だと言えます。ただし、それでもGIエリアライトを入れておくことをお勧めします。

それでは、次にGIエリアライトの効果がはっきりわかる照明について説明します。

図072-10
このシーンでは、入り口の両側に小さな立方体状の照明機器を配置し、明るさ5000の発光するマテリアルを適用しています。オブジェクトが小さく、明るく、直接見えているので、非常に大きなノイズが発生します。

それでは、発光するマテリアルにGIエリアライトオプションを入れてレンダリングしてみます。すると、ノイズが十分きれいに収まります。

 

最後に、CINEMA 4D R15とR16のバグについて説明します。GIエリアライトは、建築や内装のCGを作る際に欠かせない機能ですが、R15とR16には「シーンに大きなオブジェクトを置くと絵が破綻する」というバグがあります。

この点に注意して、もしGIエリアライトオプションを入れた結果ノイズが増えるような場合は、シーンから大きなオブジェクトを削除するようにしてください。

図072-11

 

Step 7

GIエリアライト、全ピクセルでサンプリング

  一般的にイラディアンスキャッシュモードでGIを計算する場合、オブジェクトの表面を適当な間隔でサンプリングして明るさを決定します。そして、サンプルポイントの間はなめらかに補間されます。ほとんどの場合この方法は一番速くてきれいな方法なのですが、一つだけ弱点があります。それは、影がボケることです。この問題を解決するために、GIエリアライトには「全ピクセルでサンプリング」というオプションがあります。このオプションを選択すると、GIエリアライトから出た最初の光(直接光)だけがQMCモードでレンダリングされます。QMCモードは、サンプリングをせず全てのピクセルに対してGIの計算をするため、影を含めて正確できれいな絵を生成できますが、イラディアンスキャッシュモードの何十倍もの時間がかかります。そこで、GIエリアライトから出た光の中で影に対する影響の大きい最初の光だけを正確なQMCで計算し、それ以外の光は効率のいいイラディアンスキャッシュで計算させるわけです。全ピクセルでサンプリングオプションを使うと、計算時間が2倍程度長くなります。しかし、GIエリアライトを多用している場合は使うことをお勧めします。それに対して、もともと影がシャープに出るライトオブジェクトを多用している場合や、絵的に影が重要でない場合は使う必要ありません。図072-12

 

Step 8

コンポジットタグ、GIの精度

  GIエリアライトは発光する側に対する設定でしたが、ここでは光を受ける側に対する設定について説明します。一般的に、絵の中にはノイズが目立ちやすい部分と目立ちにくい部分があります。例えば白い壁は目立ちやすく、黒い壁は目立ちにくいといえます。しかし、CINEMA 4Dは両方を同じ精度で計算します。理由は、計算するまでそれが白いか黒いかわからないからです。また、絵の中には重要な部分とそうでない部分があります。例えば建物の玄関は重要な部分で、裏口はそうでないといえます。しかし、CINEMA 4Dは両方を同じ精度で計算します。理由は、CINEMA 4Dには常識がないからです。このような場合、人間の目から見て絵の中の気になる部分だけ計算精度を上げられれば便利です。コンポジットタグの中のGI設定を使うと、オブジェクト単位でGIの計算精度を上げたり下げたりできます。 図072-13

 

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