スペキュラも、R16で大きく変わりました。詳細については、前の鏡面反射を参照してください。
「スペキュラ」チャンネルは、実はマテリアルの基本的な性質ではありません。
「カラー」、「鏡面反射」、「スペキュラ」は、全て「反射される光」であり本質的には同じです。
カラーと鏡面反射の違いは、反射される方向が「ランダムか規則的か」ですが、これも表面粗さを大きくすると同じになってしまいます。
また、鏡面反射とスペキュラは両方とも規則的に反射される光です。
それでは何が違うのかというと、鏡面反射は全ての光を反射するのに対して、スペキュラはライトからの光しか反射しません。つまり、鏡面反射はスペキュラの機能を含んでいるのです。
これは、カラーがライトの光しか反射しないのとよく似ています。ただし、カラーはGIを適用することでライト以外の光も反射するようになります。
しかし、スペキュラにライト以外の光を反射させる方法はありません。
スペキュラという機能が生まれたのは、30年以上も前の話で、当時はコンピューターの速度が遅く、GIはおろか鏡面反射さえ満足に計算できませんでした。
その当時の技術で、少しでもマテリアルをリアルに見せるための方便としてスペキュラが開発されたのです。
したがって、鏡面反射やGIを普通に使えるようになった現在、スペキュラの存在意義はかなり薄れているといえます。
実際、ほとんどのシーンはスペキュラなしで作れますし、「規則的に光を反射する」という本来の目的でスペキュラを使うことはまずありません。
したがって、CINEMA 4Dを始めたばかりの人は「スペキュラを無視」して構いません。その代わり、鏡面反射をしっかり設定してください。
現在のスペキュラは、本来の目的から離れて「異方性」、「布」、「髪の毛(これはヘアマテリアルの中で使います)」等の「特殊効果」を表現するために使います。
まず、「スペキュラのみ」のマテリアルと「鏡面反射のみ」のマテリアルを比較すると、スペキュラのみのマテリアルにはその他のオブジェクトが、鏡面反射のみのマテリアルにはライトが映り込んでいないことがわかります。
図026-7a、b
左はスペキュラのみのマテリアル(フレーム21)。右は鏡面反射のみのマテリアル(フレーム22)。
これは、30年前の流儀が現在もデフォルトとして残っているからです。ライトは光を放射するにもかかわらず、カメラからも鏡面反射からも見えなくなっていて、ただスペキュラだけに反応します。
この問題は、ライトに可視光線を適用したり、ライトの位置に発光するマテリアルを置くことで簡単に解決できます。
こうすると、鏡面反射のみのマテリアルにもライトが写り込むので、もうスペキュラは要りません。
図026-8a、b
左はスペキュラのみのマテリアル(フレーム21)。右は鏡面反射のみのマテリアル(フレーム24)。
ところが、異方性などの特殊効果を使うと話が違ってきます。
異方性を計算するために鏡面反射に表面粗さをかけると、現在のコンピューターでも計算がかなり重くなります。
また、ライトの位置に非常に明るく発光するマテリアルを置いて、グラデーションを調整する必要があり、これはシーンに存在するマテリアル全てに影響します。
また、強い光がマテリアル内部に入った時に生じる回折や干渉(猫目石や真珠などのマテリアルで生じる)現象は単純な鏡面反射では再現できません。
このような特殊な状況では、スペキュラを併用した方が設定が楽で、計算が速く、きれいな絵ができます。
ただし、あくまでもメインは鏡面反射で、スペキュラは補助です。つまり、鏡面反射だけで最低限の絵ができるように設定し、足りない部分をスペキュラで補うわけです。
鏡面反射の設定が足りなかったり(ライトが鏡面反射しない等)、不正確であれば(フレネルがかかっていない等)、スペキュラをどう変えてもリアルな絵はできません。
図026-9a、b
左はスペキュラを含むマテリアル(フレーム7)。右は鏡面反射のみのマテリアル(フレーム25)。
スペキュラを細かくコントロールすると、布のような規則的な構造を持ったマテリアルや、メタリック塗装のように何層にも重なったマテリアルをリアルに表現できます。
図026-10a、b
左は布のマテリアル(フレーム27)。右はメタリック塗装のマテリアル(フレーム28)。
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