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カテゴリ: モデリング基礎

モデリング基礎 1: 準備

■講座テキスト

  1. モデリング基礎 1: 準備
  2. モデリング基礎 2: 前面ガラス
  3. モデリング基礎 3: ホームボタン
  4. モデリング基礎 4: ボディ
  5. モデリング基礎 5: 背面カメラ
  6. モデリング基礎 6: スイッチ
  7. モデリング基礎 7: コネクタ
  8. モデリング基礎 8: スタジオ撮影
題名 内容、及び関連する章 作成日/注記
101 1_準備 作るものを決める、iPod Touch 4、資料を集める、図面を描く、ダミーオブジェクト、テクスチャを作る、テクスチャプレビュサイズ、 2011.8.14

 

Step 1

作るものを決める、iPod Touch 4

CINEMA 4Dで何かを「モデリング」する際に、まず最初に考えなければいけないのは、「それを作るべきか」ということです。3DCGに限らず全ての技術に共通することですが、技術には必ず「得意」と「不得意」があります。また、3DCGにおいても、各ソフトごとに得意、不得意があります。例えばCINEMA 4Dで建築CGを作る場合、「建築物本体」は簡単に作れます。しかし、「添景」であるはずの「樹木」や「人物」を作るのは非常に困難です。このような場合、可能なら樹木や人物はCINEMA 4Dの中で作らず、レンダリング後に実写画像を2Dで合成してしまった方が楽で、しかも高品質に仕上がります。

今回は、「小物」ということで「第4世代のiPodTouch」を作りますが、その理由は「CINEMA 4Dで作りやすい」からです。同じ小物でも、「ぬいぐるみが付いた携帯ストラップ」などは非常に作りにくいので、余程のことがなければ作らない方がいいです。

中には「仕事なので作るものを自分で選べない」という人もいるかもしれません。しかし、明らかに3DCGに向いていないものを作る仕事が来た時は、理由を述べた上で断った方がいいと思います。無理して作っても、十分な品質に達しなければ、どのみちその仕事は長続きしません。

 

次に、何かを作ると決めた時に考えなければならないのは、「どうやって作るか(方法、手順)」ということと、「どこまで作るか(程度、品質)」ということです。これらは、クライアントの要望、納期や予算、自分の能力などから逆算して決定していくことなので、条件によって大きく変わります。つまり、一概に「この方法が一番いい」とは言えません。

例えば、今回私がこの講座で説明するモデリング方法も、「CINEMA 4Dを少し使える人が2日間で作れる」という条件の中で考えたもので、「この方法が最善である」とか「全ての場合にこの方法が使える」、というわけでは決してありません。

したがって、モデリング作業を始める前に「どうような方法で、どこまで作り込むか」、を十分に決めておくにはかなりの知識と経験が必要です。特に初心者にとっては「全く見当がつかない」かもしれません。しかし、これはとても重要なことなのです。「全く見当がつかないから、行き当たりばったりで適当に作ってみよう」では、いつまでたっても上達しません。見当がつかないなりに、計画的に作業を進めるように心がけて下さい。

 

 

Step 2

資料を集める

何を作るにしても、資料集めは非常に重要な作業です。ここで手を抜くと、作品の品質が下がるだけでなく、作業効率自体も低下します。なぜなら、前のステップで説明した「どうような方法で、どこまで作り込むか」ということは、資料集めをしながら平行して考えるものだからです。考えながら資料を探せば、短期間で必要充分な資料を集められます。それに対して無計画に資料を集めると、「使えない資料ばかりあって、必要な資料がない」ということになります。しかし、昔と違って資料集めはずいぶん楽になりました。インターネットで多くの情報を収集でき、またスキャナやデジカメを使って資料を集めれば、直接それらの資料をテンプレート(下敷き)としてモデリング作業を進められます。今回はiPodTouchの分解写真を公開している次のサイトと、iPodTouchの実物、およびそれをスキャナで取り込んだ画像を元にしてモデリングしました。

1. iPodTouchの分解写真を公開しているサイト

 

2. iPodTouchの実物

図101-1

 

3. スキャナで取り込んだ画像

図101-2

 

 

Step 3

図面を描く

何を作るにしても、図面書きは非常に重要な作業です。なぜなら、図面を描く作業を通じて、ステップ1で説明した「どうような方法で、どこまで作り込むか」ということをより細かく考えられるからです。また、自分の手で図面を描くことで、モデリングするものの形状、構造、数値などが頭の中に明快に刻み込まれます。最初に図面を頭の中に入れておけば、モデリング中の試行錯誤や失敗を最小限に減らせます。場合によりけりですが、納期の1/4程度は資料集めや図面を描く作業に当てるべきです。ところが、私がこのように言うと、ほとんどの人は「忙しくてそんな時間は取れない」と答えます。しかし、作るものの形状や構造を頭に入れずにいきなりモデリング作業を始めても、「ズレ」や「はみ出し」が頻発し、「失敗」や「作り直し」の連続になります。納期の1/4ぐらいは簡単に失われますし、時間内に全ての「失敗」を修正できず、出来の悪い作品になってしまいます。

忙しいとか、時間がないと言う人は、「なぜ忙しくなってしまうのか」について一度考えてみて下さい。

 

3DCGに限らずなんでもそうですが、「失敗」は「修正するもの」ではなく「発生させないもの」です。つまり、失敗を発見してから図面を確認しているのでは遅いのです。なぜなら、その時には他にもいろんな失敗が発生していて、ただ図面が頭に入っていないあなたにはそれが見えていないだけだからです。発見されない失敗は修正されません。

 

それから、「図面は既にあるので、わざわざ描き直す必要はない」という人もいます。しかし「図面がある」ということと、「図面が頭に入っている」ということは全く別です。その図面を自分が描いたのならいいですが、他人が描いた図面をただ持っているだけではほとんど役に立ちません。その図面を理解するために、自分で描き直すことをお勧めします。

改めて書きますが、図面を描くのは、「早くきれいに」作品を作るためです。また、「図面を描くのが面倒」という人は、そもそも3DCGをやらない方がいいです。図面を描くよりずっと面倒ですから。

 

下の図は、この講習で使う図面の例です。これは講習会用ということでCADソフトを使って清書していますが、みなさんが自分の作品を作る時はもちろん手描きで構いません。私も最初は手描きの図面を使ってモデリングしました。今回は、このような図面を13枚描きました。かかった時間は、資料集めと図面描きに1日(テクスチャ作成も含む)、モデリング(マテリアル作成やレンダリングも含む)が2日です。

図101-3

図面を全てダウンロード(PDF形式)

 

 

Step 4

ダミーオブジェクトを作る

モデリング作業をする時には、「ダミーオブジェクト」を作っておくといろいろな作業を効率よく進めることができます。ダミーオブジェクトというのは、これからモデリングするオブジェクトを直方体などのプリミティブで置き換えたもので、ほとんどの場合「幅、奥行き、高さ」などの値しか合っていません。しかし、このダミーオブジェクトにスキャナで取り込んだ画像を貼ると、そこから部品の位置や大きさ、形状を求めたり、テクスチャを作成することができます。 図101-4

図101-4の下に見えるのがダミーオブジェクトで、それを下敷きにしてボディ背面のロゴや文字を直接スプラインで作成しています。こうすれば、図面を起こす必要がなく、短時間で正確なテクスチャを作成できます。

テクスチャをこのような目的に使う場合、デフォルトのままでは解像度が足りません。マテリアル編集から「エディタ」パネルを開き「テクスチャプレビュサイズ」の値を大きくすると、十分な解像度のテクスチャをエディタに表示できます。

図101-5

ただし、テクスチャプレビュサイズを大きくするとそれだけ多くのメモリを必要とします。とは言っても、現在の標準的なPCであればほとんど気にする必要はありません。

 

 

Step 5

テクスチャを作る

今回は次の4種類のテクスチャを作成しました。テクスチャの作成は基本的に2Dの作業なので、詳細については省略します。私は全てCINEMA 4Dの中で作成しましたが、IllusutratorやPhotoshop等自分の使いやすいソフトを使って下さい(全てのテクスチャをダウンロード)。また、今回は部品をモデリングする時にIBL(イメージベースドライティング)を含んだシーンを使っています。IBLを使うと、オブジェクトのマテリアルがリアルに表現され(特に透過、鏡面反射、ハイライトチャンネルなど)、正確なマテリアルを作れます。IBLを使うにはHDRパノラマ画像が必要です(手持ちのHDR画像がない場合は、照明基礎の講習で使ったHDR画像(24MB)をダウンロードして下さい)。1. フロントガラス背面に印刷してあるマスク

図101-6

スキャナで取り込んだ画像を下敷きにして作成しました。解像度は「1130*2172ピクセル」になっています。フロントガラスの大きさが「56.5*108.6mm」なので、1mmが20ピクセルに相当するようにしました。こうしておくと、Photoshopの単位とCINEMA 4Dの単位がそろうので作業が楽になります。

 

2. 液晶画面

図101-7

iPodTouchのスクリーンショット機能を使って作成しました。iPod Touchでは、「ホームボタン」と「スリープボタン」を同時に押すと、「写真 -> カメラロール」の中にスクリーンショットが保存されます。今回は全部で6枚のスクリーンショットを使いました。解像度は「640*960ピクセル」になっています。

 

3. ホームボタンのマーク

図101-8

スキャナで取り込んだ画像を下敷きにして作成しました。解像度は「200*200ピクセル」になっています。これも1mmが20ピクセルに相当するようにしました。

 

4. ボディ背面にエッチングしてあるロゴと文字

図101-9

スキャナで取り込んだ画像を下敷きにして作成しました。解像度は「1178*2220ピクセル」になっています。これも1mmが20ピクセルに相当するようにしました。

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モデリング基礎 2: 前面ガラス

題名 内容、及び関連する章 作成日/注記
102 2_前面ガラス 前面ガラス、押し出しNURBS、フィレット、正方形分割、細分化、ブール、テクスチャ、アルファ、選択範囲に限定、平行投影、オブジェクトに合わせる、C1、フレネル鏡面反射、拡散鏡面反射、液晶、 2011.8.14

 

Step 1

前面ガラス(Front_Glass)

それでは前面ガラスからモデリングを始めます。

図102-1

図面(PDF)

完成した部品ファイル

 

作業に入る前に、テンプレートファイルHDRパノラマ画像(24MB)をダウンロードして下さい。

 

前面ガラスは比較的簡単に作れます。まず、図面にしたがって「長方形」スプラインを作成し、押し出しNURBSを使って立体化します。この時、大きさ「0.2」の「フィレット」を与えて下さい。これは現物を見て決めるものなので、元の手描き図面には書いてありませんでした。

また、キャップの分割を「N-gons」から「四角形」に変更し、「正方形分割」オプションを選択します。そして「幅」の値を「2」に指定して下さい。さらに、断面スプラインの「補間法」を「細分化」に切り替え、「最大長」の値を「2」に指定します。こうすることで、複雑なモデリングや変形のアニメーションを追加しても面が壊れなくなります。

図102-2

 

次に、「ブール」オブジェクトを使ってホームボタンが入る穴を開けます。「スプラインマスク」オブジェクトを使って断面スプラインの段階で穴を開けてもいいのですが、そうすると穴の部分にも周囲と同じ「0.2」のフィレットがかかってしまいます。

ブールを使うと、今度は穴の周囲に全くフィレットを取れなくなってしまいますが、「2日間で作れる程度の品質」が前提なのでこれでよしとします。もし、どうしてもフィレットが必要な場合は、ブールを確定させた後ポリゴンモデリングします。

図102-3

 

 

Step 2

前面ガラスのマテリアルとテクスチャ

前面ガラスのマテリアルは少し複雑です。前面ガラスには「マスク(glass_mask)」、「表面(glass_front)」、「裏面(glass_back)」、「エッジ(glass_sand)」の4種類のマテリアルが適用されていて、マスクにはテクスチャも含まれるからです。しかし、幸いなことにこれらのマテリアルは全て「選択範囲に限定」機能を使って簡単に切り分けられます。

まず、「マスク」マテリアルを作成し、アルファチャンネルにマスク画像のテクスチャを読み込み、押し出しNURBSに適用します。しかし、デフォルトの「投影法」が「UVWマップ」になっていて、キャップにはUV座標がないので、テクスチャは表示されません。

そこで投影法を「平行」に切り替え、テクスチャ軸を回転させてキャップに合わせます。そして「オブジェクトに合わせる」機能を使って、マスクの大きさを前面ガラス全体に正確に合わせます。

次に、「選択範囲に限定」に「C1」を指定します。これは「押し出しNURBSの裏側のキャップだけ」という意味です。

図102-4

 

次に、ガラスのマテリアルを作ります。ガラスのマテリアルは、通常裏表で同じですが、iPodTouchをよく見ると、ガラスの表面が光をよく反射するのに対して、裏面はほとんど反射しません。これは、表面が「撥水、発油コーティング」されていて、裏面が「反射防止コーティング」されているためだと思われます。

細かいことですが、簡単に変更できるので、今回は変えてみました、ガラスの表面と裏面で違っているのは、「透過」チャンネルの「フレネル鏡面反射度」の値だけです。この値が、表面は「100」、裏面は「30」になっています。気にならなければ、表裏同じでも構いません。

図102-5

次に、ガラス周囲のマテリアルを作ります。ガラス周囲の部分は切断した後磨いていないので、砂目になっています。これを表現するために今回は「拡散表面反射」機能を使いましたが、レンダリングが重くなるので「透過」チャンネルを切っています。

計算時間が気にならなければ透過チャンネルを入れても構いませんし、見た目が気にならなければ拡散鏡面反射を切っても構いません。自分の目で見て判断して下さい。

最後に、iPodTouch用に作ったマテリアルを新規レイヤにまとめ、レイヤの名前を「iPodTouch」に変更します。

 

 

Step 3

液晶(LCD)

次に液晶を作ります。これ以降の部品のモデリングは、前に作った部品のシーンファイルを変更しながら作っていくようにします。こうすると、前のシーンで作ったオブジェクトやマテリアルを簡単に流用できます。

図102-6

図面(PDF)

完成した部品ファイル

 

液晶の作り方も簡単です。図面にしたがって、「立方体」と「平面」を組み合わせるだけでできます。

内側に収まっている部品でもあり、分割する必要はほとんどありませんが、「iPodTouchが飛び跳ねる」というようなアニメーションを作る場合を考えて、一応分割してあります。

図102-7

 

次に、液晶にマテリアルを適用します。液晶の本体部分は液晶の表示部分よりも少し大きく、真っ黒です。

液晶の表示部分は、バックライトによって発光するわけですから、マテリアルでもiPodTouchのスクリーンショットを「発光」チャンネルを読み込みます。今回は、オブジェクトがUV座標を持っている「平面」なので、マテリアルを適用するだけで正しく貼れます。

図102-8

 

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モデリング基礎 3: ホームボタン

題名 内容、及び関連する章 作成日/注記
103 3_ホームボタン ホームボタン、ブール、スプラインマスク、ナイフ、フレネル、オブジェクトに合わせる、一体化、セグメントを連結、前面カメラ、オイルタンク、スプライン描画、拡散鏡面反射、サイドフレーム、 2011.8.15

 

Step 1

ホームボタン(Home_Button)

次にホームボタンを作ります。

図103-1

図面(PDF)

完成した部品ファイル

 

ホームボタンの形状は、図面からわかる通り「円柱」と「球体」を合成した形状になっています。したがって、作り方としては以下の3通りがあります。それぞれよく使うモデリング方法なので、ここでは全て説明することにします。

1. ブールオブジェクトを使って、直接円柱から球体を引く。

図103-2

これが一番簡単な方法です。しかしこの方法では、球体の分割数を縦横別々に変えられないため、「放射方向の分割数が足りなくなる」という問題が発生します。また、フィレットを取ることもできません。

 

2. スプラインマスクオブジェクトを使って、長方形から円形を引いた断面スプラインを作成し、それを回転NURBSで立体化する。

図103-3

これが二番目に簡単な方法です。スプラインマスクが二つのスプラインを自動的につないでくれるので、編集ツールを使って面倒な作業をする必要がありません。しかし、断面スプラインとして使うには、一度編集可能にしてナイフで半分に切る必要があります。そして、この時スプラインのタイプが「線形」になり、曲線が多数の直線に変換されてしまいます。

 

3. 編集ツールを使って、直接長方形から円形を引いた断面スプラインを作成し、それを回転NURBSで立体化する。

図103-4

これが一番面倒な方法ですが、同時に一番きれいに作れる方法でもあります。今回はこの方法を採用することにします。

スプラインをナイフで切るところまでは前の方法と同じですが、その後二つのスプラインを「一体化」し、接続するポイントを一致させ、「セグメントを連結」機能を使って一本のスプラインにまとめます。こうすると、スプラインのタイプは「ベジェ」のままで、曲線もそのまま保たれます。

 

オブジェクトができたら、マテリアルを作成します。

図103-5

ホームボタンにはマークが付いているので、ベースの部分とマークの部分の二つのマテリアルを作成します。鏡面反射チャンネルにフレネルシェーダを使っているのは、周囲のガラスのマテリアルと反射率を合わせるためです。

マークのテクスチャも、大きさをオブジェクトに合わせて作成してあるので、「オブジェクトに合わせる」機能を使って簡単に貼れます。

 

 

Step 2

前面カメラ(Front_Cam)

次に前面カメラを作ります。

図103-6

図面(PDF)

完成した部品ファイル

前面カメラは、「ボディ」、「レンズ」、「レンズフード」の3個の部品からできています。カメラは、基本的にボディ内部に収まっていて外部からはほとんど見えない部品ですが、その割には目立ちます。理由は、iPodTouchのデザインがシンプルであることと、レンズという部品が元々目立つ性質を持っているからです。

人間に限らず、生物は全て本能的に他の生物の「目」を気にします。そしてレンズは、「丸い」、「透明」、「鏡面反射する」といった生物の目と共通する性質を持っているのです。このような部品は、小さくても丁寧に作る必要があります。

まず、ボディは「立方体」オブジェクトで、レンズは「オイルタンク」オブジェクトで作ります。

図103-7

 

次に、レンズフードは回転NURBSで作ります。断面スプラインは、「線形」スプライン描画ツールを使って作成します。

図103-8

 

オブジェクトができたら、マテリアルを作成します。

図103-9

ボディとレンズフードはABSというプラスチックでできています。表面が微妙にザラついていて、つやのあるマテリアルで、これを表現するために「バンプ」チャンネルと「拡散表面反射」機能を使いました。レンズは、透過チャンネルを省略し、「鏡面反射」チャンネルだけで表現しています。

 

 

Step 3

サイドフレーム(Side_Frame)

次にサイドフレームを作ります。

図103-10

図面(PDF)

完成した部品ファイル

サイドフレームは、スイープNURBSで作成します。

図103-11

オブジェクトができたら、マテリアルを適用します。サイドフレームのマテリアルは、前面カメラで使った「ABS_black」をそのまま使います。

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モデリング基礎 4: ボディ

題名 内容、及び関連する章 作成日/注記
104 4_ボディ ボディ、ガイドスプライン、対称オブジェクト、ポリゴンモデリング、エッジカット、押し出し、縫い合わせる、 2011.8.16

 

Step 1

ボディ(Body)、ガイドスプライン

次にボディを作ります。 図104-1

図面(PDF)

完成した部品ファイル

ボディは、おそらく今回作るオブジェクトの中で最も難しい形状をしています。それは、数値でうまく指定できない不規則な曲面を含んでいるからです。したがって、ポリゴンモデリングで作るしかありません。

ポリゴンモデリングを使えばどんな不規則な曲面でも表現できますが、今度は曲面のスムーズさを保つのが難しくなります。そこで、「ガイドスプライン」を使うことにします。スナップ機能を使ってポリゴンオブジェクトをガイドスプラインにスナップさせれば、少なくともスナップさせた部分についてはスプラインと同等のスムーズさを保つことができます。

 

図104-2

今回は、ボディー外周と裏側の曲面部分の2ヶ所に対してガイドスプラインを作成しました。裏側の曲面は縦横方向とも同じスプラインを使っていて、それぞれ対称オブジェクトで複製しています。

 

 

Step 2

ボディ(Body)、ポリゴンモデリング

ガイドスプラインができたら、次に立方体を元にしてポリゴンモデリングを進めていきます。 図104-3

ポリゴンも実際に作るのは1/4だけで、これを対称オブジェクトを使ってXY軸とYZ軸に複製し、さらにHyperNURBSで丸めています。

 

次に、エッジカットを使って曲面になる部分を細分化し、角のポイントを外周スプラインにスナップさせていきます。

図104-4

スナップのターゲットは「スプライン」でもいいのですが、これだとスプライン上を連続的に動いてしまい、ポリゴンを均等に分割できません。そこで、あらかじめスプラインを等分割しておき、「(スプラインの)ポイント」をターゲットにしました。

最後に全てのオブジェクトをグループ化して裏返しました。こうするとボディー裏側の曲面を編集しやすくなります。

 

次に、ボディ裏側の曲面部分のポイントをガイドスプラインにスナップさせていきます。角の部分は、両方のガイドスプラインの中間的な値になるので残しておきます。

図104-5

 

次に、ボディ裏側の角の部分を整形します。この部分の編集はまさに「目分量」になります。マテリアルを適用する前の段階ではよくわからないので、マテリアルを適用した後で「シワ」、「歪み」等の問題があるようだったらここまで戻って修正して下さい。

ざらついたマテリアルの場合はほとんど問題になりませんが、iPodTouchではこの部分が鏡面になっているので、ほんのわずかな歪みでも目立ちます。

図104-6

HyperNURBSを使ったポリゴンモデリングで一番重要なのは、ポリゴンの構成とその形状です。HyperNURBSを使うと、実は三角ポリゴンも四角ポリゴンも四角ポリゴンに細分化されます。しかし、その形状は大きく異なります。四角ポリゴンでは、元の形状と相似形の四角ポリゴンに細分化されるのに対して、三角ポリゴンでは歪んだ四角形に細分化されます。そして、この歪みは三角形が細長くなる程厳しくなり、またその部分が強く曲がっている程「シワ」となって見えてきます。

したがって、なるべく三角ポリゴンが少なくなるようにポリゴンを分割して下さい。また、三角ポリゴンの形状はなるべく「正三角形」に近づけて下さい。また、なるべく曲率の小さい部分に三角ポリゴンを持ってくるようにして下さい。

 

 

Step 3

ボディ(Body)、押し出し

ベースとなるポリゴンができたら、これを押し出して立体化します。 図104-7

対称オブジェクトを使ってモデリングしているオブジェクトを押し出した場合、断面部分に不要なポリゴンが生じますので、必ず消去しておいて下さい。また、もし断面からズレているポイントがあったら修正しておいて下さい。

 

次に、外周部分の形状を修正します。この部分も、細かい割にハイライトが入ってよく目立つので丁寧にモデリングします。

図104-8

まずエッジカット機能の「オフセット」の値を動かして、適切な位置にポイントを作成します。そして、「縫い合わせる」機能を使って押し出した面を斜めにします。この後さらに、エッジカット機能を使って外周部分にエッジを追加します。これは、HyperNURBSをかけた時にエッジ部分をシャープに保つためです。

 

 

Step 4

ボディのマテリアルとテクスチャ

オブジェクトができたら、マテリアルを作成します。 図104-9

ボディは、よく鏡面加工されたステンレスでできています。また、表面をエッチングすることでAppleやiPodのロゴが入っています。したがって、マテリアルを二つ作り、アルファで切り抜いて重ねます。

ロゴのテクスチャもオブジェクトの形状に合わせて作ってあるので、「オブジェクトに合わせる」機能を使って簡単に貼れます。

実は、ボディにはもう一つ「metal_cut」というマテリアルが適用されています。これはスイッチやコネクタが収まる穴の断面部分に使われているのですが、まだ穴をあけていないので、ここでは作りません。

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モデリング基礎 5: 背面カメラ

題名 内容、及び関連する章 作成日/注記
105 5_背面カメラ 背面カメラ、フィルタ、異方性スペキュラ、照明と異方性シェーダ、自動的に同心円パターン、へアライン、コンポジットタグ、アンチエイリアス、ベスト、AAの精度を指定、穴あけオブジェクト、 2011.8.16

 

Step 1

背面カメラ(Back_Cam)、本体

次に背面カメラを作ります。 図105-1

図面(PDF)

完成した部品ファイル

背面カメラの本体は、前面カメラを複製して作ります。基準面からのオフセットを変更し、レンズフードの断面スプラインを少し変えるだけで簡単にできます。

図105-2

 

 

Step 2

背面カメラ、フィルタ

次に、カメラの前に付いているフィルタとそのフレームを作ります。 図105-3

フィルタのフレームは、レンズフードを複製し、断面スプラインを変えて作ります。細かいですが、外側に「0.05」のフィレットを付けました。また、回転NURBSの分割数を「48」に上げています。

次に、フィルタ本体は「円錐」オブジェクトで作ります。円錐オブジェクトは「円錐台(上端を切った円錐)」も作れます。また、半径の値を少しだけ小さくしています。理由は、透明なオブジェクトの場合、面が重なっているとその部分を正しくレンダリングできないからです。図面通りに作ると、フィルタフレームの内側とフィルタの外側は完全に面が一致してしまいます。

 

 

 

Step 3

背面カメラのマテリアルとテクスチャ

オブジェクトができたら、マテリアルを作成します。背面カメラ本体のマテリアルは前面カメラのマテリアルと全く同じなので省略します。また、フィルタは反射防止コーティングがされたガラスということで、前面ガラスの裏側に使ったマテリアルをそのまま使います。次に、フィルタフレームのマテリアルについてですが、これの制作には今回一番苦労しました。とても小さい部品ですが、円周方向にヘアラインが入っています。このようなヘアラインは特殊な旋盤加工をすることによって生じ、「異方性スペキュラ」という特殊効果を発生させます。

図105-4に示したように、通常の面(つまり異方性のない面)では、ライトが映り込む方向に円形のスペキュラが生じます。しかし異方性のある面では、ヘアラインに垂直な方向に長く伸びた特殊なスペキュラが生じます。

図105-4

左が通常のスペキュラ、右は異方性スペキュラ。

そして、図105-5がiPodTouchの背面カメラのフィルタフレームに生じている異方性スペキュラです。前面カメラの制作でも説明した通り、カメラのレンズというのは「目」ですから、とても目立ちます。Appleもそれを知った上で、デザインの一部としてヘアラインを付けているのです。したがって、省略するわけにはいきません。

図105-5

 

しかし、CINEMA 4Dの標準マテリアルには「異方性スペキュラ」がありません。そこで「特殊効果 -> 照明と異方性」というシェーダを使ってこれを表現します。

図105-6

「照明と異方性」シェーダは、発光チャンネルに入れて使います。今回は「スペキュラ1」チャンネルだけ使用し、他のチャンネルは全て切ってしまいます。また、ヘアラインの投影法は「自動的に同心円パターン」にします。この投影法は原理がよくわからないので、実際に試して決定して下さい。

 

異方性スペキュラを設定するのは簡単ですが、この段階ではまだ金属部品のようには見えません。理由は、スペキュラがライトにしか働かないからです。これは標準のスペキュラでも異方性スペキュラでも同じ原理的な制約です。したがって、周囲に明るいオブジェクトがあってもそれが映り込みません。

そこで、「鏡面反射」チャンネルと「バンプ」チャンネルを追加します。鏡面反射で金属を、バンプでヘアラインを実際に表現するわけで、より現実に近い方法だと言えます。実際、拡大して見た場合はこれで十分に異方性スペキュラを表現できます。しかし、遠くから見ると、バンプチャンネルの効果がなくなり、同時に異方性スペキュラも消えてしまいます。

というわけで、いろいろ試行錯誤した結果、近くから見た場合は鏡面反射とバンプによる異方性スペキュラが表現され、遠目には照明と異方性シェーダによる異方性スペキュラが表現されるように、うまくバランスを取ることにしました。非常に難しい表現であり、これが一番いい方法なのかどうかはわかりませんが、参考にして下さい。

図105-7

 

最後に、「コンポジット」タグについて簡単に説明します。フィルタフレームには鏡面反射と細かいバンプがついているため、「ベスト」のアンチエイリアスを強めにかける必要があります(例えば4*4)。しかし、レンダリング設定を開いてシーン全体のアンチエイリアスを強くすると、当然レンダリング時間は長くなります(4*4の場合は16倍遅くなる)。

このような場合、シーン全体のアンチエイリアスは最低(「1*1」)に下げ、必要なオブジェクトにだけコンポジットタグを追加し、「AAの精度を指定」オプションを使ってアンチエイリアスの値を大きくすると、レンダリング時間を大幅に短縮できます。

図105-8

 

 

Step 4

背面カメラをボディに組み込む

背面カメラとフィルタができたら、それらが収まる穴をボディに開けます。 図105-9

図面(PDF)

まず、図105-10のような「穴あけ」オブジェクトを作成し、ブールオブジェクトを使って穴を開けます。

図105-10

ただし、この作業は簡単ではありません。なぜなら、この部分はボディーの角の曲面部分にかかっていて、背面カメラのフィルタが斜めに収まっているからです。その形状は作った人ごとに違っているはずで、もちろん数値で指定することはできません。目分量で調整することになります。実物を見ても、平面のフィルタを曲面に無理矢理納めているので、多少の段差が生じています。

背面カメラが収まる穴は円柱オブジェクトで作成します。また、その少し右の照度センサが収まっている小さな穴は、フィルタフレームを複製し、断面スプラインを修正して作ります。

 

次に、図面を参考にして背面カメラの位置を合わせます。

図105-11

ただし、この作業は簡単ではありません。なぜなら、この部分はボディーの角の曲面部分にかかっていて、背面カメラのフィルタが斜めに収まっているからです。その形状は作った人ごとに違っているはずで、もちろん数値で指定することはできません。目分量で調整することになります。実物を見ても、平面のフィルタを曲面に無理矢理納めているので、多少の段差が生じています。

位置合わせができたら、2個の穴あけオブジェクトをボディの下の階層に移動し、ブールオブジェクトを使って穴をあけます。ヌルオブジェクトを使ってグループ化しておけば、複数の穴あけオブジェクトを使って簡単にボディに穴を開けることができます。

 

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モデリング基礎 6: スイッチ

題名 内容、及び関連する章 作成日/注記
106 6_スイッチ スリープスイッチ、フィレット、最適化、エッジカット、ガイド、レイヤカラー、ボリュームスイッチ、せん断デフォーマ、 2011.8.24

 

Step 1

スリープスイッチ(Sleep_Switch)

次にスリープスイッチを作ります。


図106-1

図面(PDF)

完成した部品ファイル

スリープスイッチの形状は、直方体の角を丸めただけの非常に簡単なものです。

図106-2

もしスイッチの形状が複雑であれば、ボディを作った時と同じようにガイドスプラインを作ってポリゴンモデリングする必要があります。しかしこの程度であれば、標準機能で作ったフィレットを多少変更するだけで作れます。

立方体オブジェクトに付いているフィレット機能は、全てのエッジに同じ大きさのフィレットを付ける簡単なものです。したがって、そのままではこのボタンを作れません。そこで、基本となる半径「1.2」のフィレットを付けた後でごく簡単なポリゴンモデリングを追加します。

まず、編集可能にしたら、「最適化」して下さい。これは、フィレットを付けた時に重なったポイントを削除するためです。

次に、下半分のポイントを全部選択し、Yスケールの値を「0」にします。これで下側が平面になります。また、上半分のポイントを全部選択し、Yスケールの値を「0.3」にします。これで、上側の断面が楕円形になります。

最後に、「エッジカット」機能を使って外周部分の上下にエッジを追加します。これは、HyperNURBSをかけた時にエッジをシャープに残すためです。

 

次に、スリープスイッチを納める穴をあけるためのオブジェクトを作成します。

 図106-3

これは、「長方形」スプラインにフィレットを取り、押し出しNURBSで立体化しただけの簡単なオブジェクトです。

さらに、スプラインの「補間法」を「細分化」に変更し、「最大長」を「2」、「分割角度」を「10」に変更しておきます。これはブール演算でボディに穴をあけた時に、なるべくきれいに穴を開けるためです。

 

 

Step 2

スリープスイッチをボディーに組み込む

次に、スリープスイッチをボディに組み込みます。

 図106-4

まず、図面を見ながらスリープスイッチのX位置とP角度を合わせます。ただし、部品が斜めになっていて、かつボディの曲面部分に合わせるので、その他の値は目分量になります。

スリープスイッチの下端と画面との距離は大体「3.2」なので、ここにガイドとなるヌル(marker)を置き、それに合わせると作業がやりやすくなります。

スリープスイッチの位置が合ったら、スリープスイッチの穴あけオブジェクトをボディの中にある「hole_group」に移動します。これで、スリープスイッチの部分に正しく穴が空いたはずです。

ボディにここまでの部品を組み込んだシーンファイル。

 

 

Step 3

ボリュームスイッチ(Volume_Switch)

次に、ボリュームスイッチを作ります。

 図106-5

図面(PDF)

完成した部品ファイル

ボリュームスイッチの作り方の前半部分はスリープスイッチと全く同じです。

 図106-6

 

しかし、途中から作り方が変わります。ボリュームスイッチは、一見スリープスイッチと似ていますが、実は押し込む方向が違っています。スリープスイッチは斜めから押すようにできていますが、ボリュームスイッチは横から押すようになっているのです。したがって、ボリュームスイッチは45度歪んだ形状になっています。

 図106-7

ボリュームスイッチを歪ませるには「せん断」デフォーマを使います。まず、せん断デフォーマのX軸を90度回転させて、歪ませる方向を合わせます。次に、「湾曲」の値を0にします。こうすると、直線的に変形するようになります。

最後に、全体をグループ化して複製し横に並べます。これは、ボリュームスイッチが2個セットになっているからです。

 

 

Step 4

ボリュームスイッチをボディーに組み込む

次に、ボリュームスイッチをボディに組み込みます。この手順は、スリープスイッチの手順と全く同じです。

 図106-8

まず、図面を見ながらボリュームスイッチのZ位置とH、P角度を合わせます。ただし、部品が斜めになっていて、かつボディの曲面部分に合わせるので、その他の値は目分量になります。

ボリュームスイッチの下端と画面との距離は大体「3.2」なので、ここにガイドとなるヌル(marker)を置き、それに合わせると作業がやりやすくなります。

また、作業中オブジェクトの形状がわかりにくい場合は、エディタビューのメニューから「表示 -> レイヤカラー」を選択すると、現在適用しているマテリアルの色が無視され、レイヤの色で表示されます。

ボリュームスイッチの位置が合ったら、ボリュームスイッチの穴あけオブジェクトをボディの中にある「hole_group」に移動します。これで、ボリュームスイッチの部分に正しく穴が空いたはずです。

ボディにここまでの部品を組み込んだシーンファイル

 

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モデリング基礎 7: コネクタ

章番号 題名 内容、及び関連する章 作成日/注記
107 7_コネクタ マイク、メッシュ、配列、長方形選択、ガイド、ドックコネクタ、対称、FFD、ベベル、スムージング、イアホンジャック、チューブ、 2011.8.24

Step 1

マイク(Mic)

次にマイクを作ります。
図107-1図面(PDF)完成した部品ファイル マイクに関して作る部品は、マイクそのものではなくマイクの前にある「メッシュ(網)」だけです。メッシュは、簡単に作れる割に作品の質感を上げる効果があるので、きちんと作ることをお勧めします。また、メッシュはどれも似たようなものですから、一度作っておけば使い回しがききます。 図107-2メッシュは、いつも通り立方体から作っていきます。また、基本となる2*2のメッシュをポリゴンモデリングし、それを縦横方向に複製することでメッシュ全体を作ります。基本となるメッシュの太さは「0.1」長さは「0.6」とし、長さ方向に4分割しておきます。

次に、メッシュを一つ複製し、階層化し、メッシュピッチに相当する「0.3」だけずらします。また、中心を-Z方向に「0.225」だけずらしておきます。これは、縦横のメッシュをうまく重ねるための準備です。

次に、階層化したメッシュを複製し、90度回転させます。そして、こちらもX方向に「0.225」だけずらしておきます。

次に、メッシュを全て選択し、編集可能にし、断面部分のポリゴンを全て削除します。

次に、ポイントモードに切り替え、ライブ選択ツールに切り替え、「可視エレメントのみ選択」のチェックを外し、メッシュの重なる部分を交互に「0.08」だけY方向に上げていきます。

ポリゴンモデリングが全て終わったら、ポリゴンモードに切り替え、全てのポリゴンを選択し、「配列」ツールを選択します。そして「複製 X」および「Z」を「21」に指定し、「オフセット」のXとZの値を「12」に指定します。これは、2*2のメッシュの大きさが0.6*0.6で、20回繰り返すと12*12になるからです。

次に、「最適化」を実行し、重なったポイントを削除します。

最後に、スムーズタグの「角度を制限」オプションを外します。これで粗いポリゴンでもスムーズに表現されるようになります。

 

次に、マイクを納める穴をあけるためのオブジェクトを作成します。

 図107-3

これは、「長方形」スプラインにフィレットを取り、押し出しNURBSで立体化しただけの簡単なオブジェクトです。

さらに、スプラインの「補間法」を「細分化」に変更し、「最大長」を「2」、「分割角度」を「10」に変更しておきます。これはブール演算でボディに穴をあけた時に、なるべくきれいに穴を開けるためです。

次に、メッシュをY軸周りに45度回転させ、穴あけオブジェクトの位置に合わせます。

最後に、ポイントモードに切り替え、長方形選択ツールに切り替え、「可視エレメントのみ選択」のチェックを外し、上面図に移動し、メッシュの余分な部分を切り取ります。

 

 

Step 2

マイクをボディーに組み込む

次に、マイクをボディに組み込みます。マイクの組み込みは方法は、ボリュームスイッチとほとんど同じです。 図107-4まず、図面を見ながらマイクのX位置とP角度を合わせます。ただし、部品が斜めになっていて、かつボディの曲面部分に合わせるので、その他の値は目分量になります。

マイク穴の下端と画面との距離は大体「3.2」なので、ここにガイドとなるヌル(marker)を置き、それに合わせると作業がやりやすくなります。

マイクの位置が合ったら、マイクの穴あけオブジェクトをボディの中にある「hole_group」に移動します。これで、マイクの部分に正しく穴が空いたはずです。

最後に、メッシュを軸方向に移動して、穴の内側に合わせます。

 

次に、メッシュ部分のマテリアルを作ります。

 図107-5

ボディにここまでの部品を組み込んだシーンファイル。

 

 

Step 3

ドックコネクター(Dock_Connector)

次に、ドックコネクタを作ります。ドックコネクタは左右対称なので、「対称」オブジェクトを使います。また、ボディの曲面に合う部分は「FFD」を使って変形させます。 図107-6

図面(PDF)

完成した部品ファイル

ドックコネクタも立方体から作ります。

 図107-7

まず立方体を作成し、図面に合わせてサイズと分割数を指定します。

次に、立方体を編集可能にし、ポリゴンモードに切り替え、ポリゴンの半分を削除します。削除したら、ポイントモードに切り替え、最適化し、不要なポイントを削除しておいて下さい。そして、対称オブジェクトを追加します。

次に、図面に合わせて等分割されたポイントを移動していきます。この作業は後でナイフやエッジカットを使って実行してもいいのですが、分割数が初めからわかっている場合はこの方が手っ取り早いでしょう。また、複数のポイント列を選択すると、位置だけでなくサイズも同時に指定できます。

 

次に、周囲のポリゴンを選択し、「6」だけ押し出します。押し出したらベベルツールに切り替え、「0.05」だけ押し出します。同様に、中央のポリゴンを選択し、「3.2」だけ押し出し、「0.05」だけベベルします。

対称オブジェクトで対称化したオブジェクトを押し出すと、対称面に不要なポリゴンが発生するので、忘れずに削除して下さい。また、ベベルしたポイントは内側にずれています。このような場合は、対称面にあるべきポイントを全て選択し、面方向の位置とサイズの大きさを両方とも「0」にすると、簡単に対称面にそろえることができます。これでドックコネクタのケースが完成です。

 

次に、ドックコネクタの中にあるピンを二本作ります。このピンは、ドックコネクタが裏返しに刺さらないように付いています。

 図107-8

ピンも左右対称です。複数のオブジェクトを対称オブジェクトの中に入れるには、ヌルを使って階層化して下さい。

次に、図面に従って立方体のサイズを変更し、移動させてピン1を作ります。

次に、ピン1を複製し、サイズと位置を変えてピン2を作ります。

ピンができたら、スムーズタグを選択し、「スムージング角度」を「20」にします。これは、「20度よりきつく曲がっているエッジはスムージングしない」という意味です。

 

次に、ドックコネクタが収まる穴をあけるためのオブジェクトを作成します。手順はこれまでと全く同じです。

 図107-9

 

次に、ドックコネクタの端部をボディの曲面に合わせるためのFFDを追加します。

 図107-10

まずFFDを作成し、大きさ(グリッドサイズ)をコネクタケースに合わせて下さい。FFDは、変形前の枠の中にあったポイントだけを変形させます。変形後に枠の中に入ったポイントには影響しません。

次に、分割数を指定します。今回は変形するZ方向だけ2分割し(値は3になる)、他の方向は分割しません(値は2になる)。

FFDをコネクタケースの端部に合わせたら、ポイントモードに切り替え、FFDのポイントを移動させてみて下さい。ボディケースが変形するはずです。この時、ピン2も同時に変形します。

 

 

Step 4

ドックコネクタをボディーに組み込む

次に、ドックコネクタをボディに組み込みます。 図107-11まず、図面を見ながらドックコネクタの位置と角度を適当にボディに合わせます。

次に、ドックコネクタの下端と画面との距離は大体「2.4」なので、ここにガイドとなるヌル(marker)を置き、それに合わせると作業がやりやすくなります。

ドックコネクタの位置が合ったら、ドックコネクタの穴あけオブジェクトをボディの中にある「hole_group」に移動します。これで、ドックコネクタの部分に正しく穴が空いたはずです。

その後、FFDのポイントを奥行き方向に動かして、ドックコネクタのケースがボディの内側にきれいに収まるように調整して下さい。これで、ドックコネクタが完成です。

ボディにここまでの部品を組み込んだシーンファイル

 

 

Step 5

イアホンジャック(Earphone_Jack)

図107- 12図面(PDF)

完成した部品ファイル

イアホンジャックは珍しく立方体以外の形状から作ります。

 図107-13

まず、「チューブ」オブジェクトを作成して下さい。そして、図面に従って「内側の半径」、「外側の半径」、「回転方向の分割数」、「高さ」、「フィレット」を指定して下さい。

ここでも、不要なスムージングがかからないように、スムーズタグの「スムージング角度」の値を「20」に変更しておきます。

次に、FFDを作成し。大きさと位置をチューブの端部に合わせて下さい。

次に、イアホンジャックが収まる穴をあけるためのオブジェクトを作ります。作り方は他の部品と全く同じです。

 

 

Step 6

イアホンジャックをボディーに組み込む

次に、イアホンジャックをボディーに組み込みます。 図107-14まず、図面を見ながらイアホンのX位置と角度を適当にボディに合わせます。次に、イアホンジャックの下端と画面との距離は大体「1.8」なので、ここにガイドとなるヌル(marker)を置き、それに合わせると作業がやりやすくなります。

イアホンジャックの位置が合ったら、イアホンジャックの穴あけオブジェクトをボディの中にある「hole_group」に移動します。これで、イアホンジャックの部分に正しく穴が空いたはずです。

その後、FFDのポイントを奥行き方向に動かして、イアホンジャックがボディの穴にきれいに収まるように調整して下さい。これで、イアホンジャックが完成です。

ボディにここまでの部品を組み込んだシーンファイル

 

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モデリング基礎 8: スタジオ撮影

題名 内容、及び関連する章 作成日/注記
108 8_スタジオ撮影 リアルな絵を作る方法、組み合わせ、特殊な機能、作る能力、見極める能力、よく見て、よく描く、リアルでない部分を修正する、環境、スタジオ、エリアシャドウ、減衰、ライトボックスを置く、照明すること、影を描くこと、映り込むこと、 2012.1.10

Step 1

リアルな絵を作る方法

 講習会をやっていてよく話題に上るのは、「リアルな絵を作る方法」についてです。また、「このような講習を受けてもリアルな絵を作れるようになるとは思えない」とも言われます。それは、正しくもあり、間違っているとも思います。正しいと思うのは、確かにこの講習会を受けてもリアルな絵を作れるようにはならないからです。また、間違っていると思うのは、この講習会で扱っている基本的な機能を「組み合わせる」だけでリアルな絵を作れるからです。鍵となるのは「組み合わせ」です。しかし、組み合わせは無限にあるので、その全てを講習会で教えることはできません。また、そもそも組み合わせは憶えておくものではなく、その場で臨機応変に考えるものです。

 

例えば、サッカーや囲碁、将棋等のゲームを思い浮かべてみて下さい。確かにそこには「セットプレー」とか「定石」というものが存在し、教えることができます。しかし、一回聞いただけで体得できるものではありません。また、セットプレーや定石だけで実戦に臨むことはできません。

ワールドカップや名人戦であっても、特殊なボールや石、駒を使うわけではありません。優れているのは「組み合わせ」であり、「基本的な機能」は私たちと変らないのです。

 

それでは、「リアルな絵を作る」という目的に対して、この「組み合わせ」能力を向上させていく方法について説明します。

1. リアルな絵を作るには特殊な機能が必要だ、という思い込みを捨てる。

勉強以前の段階にいる人の多くがこのような思い込みを持っています。この「特殊な機能」という部分は、上の例で言うと「特殊なボールや石、駒」に相当します。言い換えれば、「ワールドカップに出ている選手は、特殊なボールを使っているからあんなに素晴らしいプレーができるのだ」と信じている人は、絶対に上達しません。

特に3DCGや写真は機械に依存する部分が多いので、「特殊なソフト」、「特殊なコンピュータ」、「特殊な機能」、「特殊なカメラ」を追い求める人がたくさんいます。この「特殊な」という部分は「魔法の」と言い換えてもいいのですが、それは「青い鳥」であって、そんなものは存在しません。

「そんなものは存在しない」と悟った時に、初めて本質的な勉強を始めることができます。

 

2. リアルな絵を作るには、何がリアルで何がリアルでないか見極める必要がある。

勉強初期や中期の人がよく陥るのは、リアルな絵を「作る能力」にこだわることです。しかし、重要なのは「見極める能力」です。

例えば、優れた絵描きが失明すれば絵を描けなくなります。それは「見極める能力」が失われるからです。しかし手が失われても絵は描けます。それは、弟子に指示して描かせる、という方法があるからです。実際のところ、優秀な画家や職人、写真家、技術者のほとんどは「工房」や「会社」というシステムの中で仕事をしており、全てを自分の手で作っているわけではありません。

実は、見極める能力のある人間から的確な指示を受ければ、誰でもすぐにリアルな絵を作れます。この講習会自体がそれを証明しています。作る能力というのは結局その程度のものであり、重要なのは「どうしたら自分で自分に的確な指示を出せるようになるか」ということなのです。

 

3. よく見て、よく描く。

「見極める能力」を向上させるための唯一の方法は、リアルな絵を自分の目で「よく見て」、自分の手で「よく描く」ことです。それ以外に方法はありません。

見るだけでもダメです。描くだけでもダメです。これは、サッカーや囲碁、将棋と全く同じです。また、「リアルな絵」というのは、実物でもいいですし、絵画でも写真でも3DCGでもいいです。自分がリアルな絵だと感じたら、それがリアルな絵です。

そのバランスと効率がよければ、例えば数年でそれなりの「見極める能力」を身につけられると思います。また、既に絵画や写真に対する「見極める能力」を持っている人は、より短期間で3DCGに対する能力を身につけられるかも知れません。ただし、この場合「先入観」が邪魔をして、より難しくなる可能性も多分にあるので、よく考えながら勉強して下さい。

 

4. リアルでない部分を修正する。

最後に、リアルな絵を描くための「具体的な手順」について説明します。これは、私が高校生の時に読んだある絵描きの言葉ですが、その後30数年経って「全くその通りだ」と思っています。

a. 何か適当に描く。

b. 描いた絵を見極めて、リアルな部分とリアルでない部分に分け、リアルでない部分を適当に修正する。

c. リアルでない部分がなくなるまで、b.をくり返し実行する。

d. リアルな絵が完成。

 

この手順を見ると、いかに「見極める能力」が重要で、「作る能力」が重要でないか判ると思います。実際3DCGの制作においても、使う機能やパラメータの値が一発で決まることはほとんどありません。常に「適当に値を入れて、よかったらそれでOK、ダメだったら修正」のくり返しです。

結局「作る能力が高い」というのは、「短時間でOKを出せる」ということに過ぎません。それによって向上するのは「時給」であって、「絵のリアリティや価値」ではないのです。

 

 

Step 2

環境

 3DCGソフトには、現実をシミュレートするための機能がいろいろありますが、リアルな絵を作るために一番重要なのは「カメラと照明」です。その次に重要なのが「マテリアルとアニメーション」であり、最後が「テクスチャとモデリング」です。この点が日本では誤解されていて、「テクスチャとモデリングが一番重要だ」と書かれている本がたくさんあります。確かに「3Dゲームの部品」を作るのが目的ならその通りですが、「絵」を作るのが目的なら、それ以外に重要なことがたくさんある、ということを憶えておいて下さい。ここでは、カメラと照明を含む「環境」という考え方について、一つの「定石」を説明します。

 

それでは、スタジオのシーンファイル(iPodTouch4_studio110.zip)を開いて、サンプルとして置いてあるiPod Touchを、今回みなさんが作ったiPod Touchに置き換えて下さい。

このスタジオでは、テーブルにアニメーションが付いているので、タイムマーカーを動かすとiPod Touch3台をまとめて1回転させることができます。

図108-1

前から見た絵はさほど違和感がないのですが、後から見た絵はかなり変です。「何だこの黒い物体は」という感じですが、何か設定が間違っているわけではありません。実際に同じ環境を作れば、似たような写真を撮ることができます。

iPod Touchの背面が黒いのは、その部分が「鏡」になっていて周囲を映しているからです。ところが現在スタジオの壁は非表示になっていて、周囲には何もありません(図108-2)。だから真っ黒に見えるわけです。しかし、編集中の画面を見ても周囲がどうなっているかは判りません。レンダリングして初めて光の「屈折」や「鏡面反射」が計算され、エディタ画面に見えていなかったものが見えてくるのです。

よく「見えないものは作らなくていい」と言う人がいますが、レイトレーシングや間接照明を計算できるレンダラーにとって、「見えないもの」など存在しません。また、直接見えないものでも丁寧に作り、計算させることが、リアルな絵につながるのです。したがって、「見えないものは作らなくていい」と思っている人はまずその点を改め、少なくとも大きいものは全て作るようにして下さい。後で問題が生じてから作り直すよりも、その方がずっと楽です。

図108-2

 

それでは「room」を表示させてみましょう。この状態でレンダリングすると、iPod Touchの背面に右の壁が映り込んで、少しは金属っぽくなってきます。しかし、上や左、後の壁には光が当たっていないので黒いままです(図108-4)。この部屋にはまだライトがなく、デフォルトライトで仮に照明されているのです。このままではどうしようもありません。

図108-3

図108-4

 

 

Step 3

ライトを置く

 それではライトを表示させます。ライトは部屋の中央上部に2個置いてあり、「light_L」、「light_R」という名前になっています。ライトを置くと部屋全体が明るくなり、iPod Touchの背面もリアルに表現されます(図108-6)。ライトの「タイプ」は「全方向」で、「エリアシャドウ」と「減衰」という性質を与えています。これらの詳細については、010章「照明基礎」を参照して下さい。

図108-5

図108-6

この結果を見れば、ライトの重要性がよくわかると思います。エリアシャドウによって自然な影が表現されています。また、スタジオの壁の角を丸くすることや、減衰によって自然なグラデーションが表現されています。

ただし、ライトを置けば何でもリアルになるというわけではありません。発想を逆にして、「絵がリアルに見えるように」ライトを置くのです。ここが難しいところです。

例えば、現実のシーンと同じようにライトを配置しても、それがリアルに見えるとは限りません。また、そもそも現実自体がリアルに見えるとは限りません。「リアル」とはそういうものです。

しかしほとんどの場合、現実の照明に近いところに「正しい照明」があります。特に初心者の場合は、まず現実通りに照明を作り、そこから試行錯誤するのがリアルな絵に到達するための近道だと思います。

 

 

Step 4

ライトボックスを置く

 最後にライトボックスについて説明します。1. 一般的にライトの第一の目的は、オブジェクトを「照明すること」です。具体的にCINEMA 4Dの機能で言うと、オブジェクトに適用されたマテリアルの「カラー」チャンネルを働かせること、となります。

しかし、ライトの大きさや形状を変えてもカラーチャンネルはほとんど変化しません。

図108-7

 

2. 次に、ライトの第2の目的はオブジェクトの「影を描くこと」です。そして、ライトの大きさを変えると、影のボケが変化します。しかし、ライトの形状を変えても影はほとんど変化しません。

図108-8

 

3. ライトの第3の目的は、オブジェクトに「映り込むこと」です。これはマテリアルの「鏡面反射」チャンネルによって計算されます。そして、映り込みに関してはライトの形状がそのまま反映されます。この映り込みを表現するための手段がライトボックスです。

図108-9

 

実際の写真スタジオで使われるライトボックスは、ライトと反射板とディフューザを組み合わせて作っているので「ボックス」になっています。しかし3DCGの場合は、プリミティブに発光するマテリアルを適用するだけでライトボックスを作れます。

また3DCGのライトボックスは、大きさや重さや明るさの制限もなく、空中に静止させることができ、何個作ってもタダです。このような点に関して3DCGは本当に楽です。ぜひ、たくさん作って使いこなして下さい。

「light_box」を表示させてレンダリングすると、図108-10のようになります。iPod Touchの右に「ディスク」で作ったライトボックスが追加してあります(図108-11)。

図108-10

Object_Movie(HTML5)

図108-11

 

ライトボックスのようなオブジェクトは、一般的に「環境」に含まれます。カメラやライトも環境の一部です。そして、いろんな環境を簡単に作れるようにしたのが、「スタジオ」もしくは「舞台」と呼ばれるシーンです。

スタジオそのものは作品でもなく絵でもないので、軽く見られがちです。しかし、実はiPod Touchもそれだけでは単なる「部品」であって、絵ではありません。iPod Touchとスタジオのいろいろな「組み合わせ」の中に、リアルな絵があるのです。

 

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