それでは、まず現在のCINEMA 4Dに入っているダイナミクスの種類について説明します。このステップは重要なのですが、いきなり読んでもわからないと思います。適当に飛ばし読みして、後で何か困った時に読み返すようにして下さい。
1. ダイナミクス
ダイナミクスは現在のCINEMA 4Dの代表的なダイナミクス機能です。ただし、「ダイナミクス」は「Studio」グレードでしか使えません。
ダイナミクスが扱えるオブジェクトは、「ポリゴン」、「スプライン」、「クローン」、「パーティクル」です。また、扱える機能は、「場」、「衝突」、「変形」、「圧力」、「体積」、「破断」です。さらに、他のオブジェクトやタグを組み合わせることにより、「オブジェクト間のリンク」、「外力」、「XPresso」なども扱えます。
2. MoDynamics
MoDynamicsは、Studioに入っているダイナミクスの機能限定版で、「Broadcast」グレードで使えます。
MoDynamicsが扱えるオブジェクトは、「クローン」と「パーティクル」だけです。また、「オブジェクト間のリンク」や「外力」は扱えません。「XPresso」は制限なく扱えます。
3. デフォーマ
実は、デフォーマの中にも「ジグル」と「衝突」というダイナミクス機能が入っています。
デフォーマが扱えるオブジェクトは、「ポリゴン」だけです。しかし、全てのグレードで簡単に使えます。ですから、ダイナミクスが必要になったらまずこの機能を試してみて下さい。
ジグルは「場」と「変形」を、衝突は「衝突」と「変形」を扱うことができます。さらに、「XPresso」も扱えます。
4. MoGraphエフェクタ
実は、MoGraphエフェクタの中にも「ディレイ」というダイナミクス機能が入っています。
ディレイは、「クローン」に対する「位置」、「スケール」、「角度」の簡単なダイナミクスしか計算できませんが、その分簡単に使えます。憶えておいて損はありません。
5. MoGraphオブジェクト
実は、MoGraphオブジェクトの中にも「MoSpline」というダイナミクス機能が入っています。
MoSplineは、「スプライン」に対する「場」の働きしか計算できませんが、その分簡単に使えます。
6. スプラインダイナミクスタグ
スプラインダイナミクスタグは、「ヘア」に含まれるスプライン専用のダイナミクス機能です。ただし、「ヘア」は「Studio」グレードでしか使えません。
「ダイナミクス」の機能と比較すると、計算の精度や拘束等の細かい機能に関してはこちらの方が優れています。しかし、スプライン同士の衝突を計算できないとか、閉じたスプラインを計算できないという欠点があります。したがって、スプラインに関しては、ケースバイケースで二つのダイナミクス機能を使い分けるようにして下さい。また、MoGraphとダイナミクス3で説明するような「クローンを使ってスプラインのダイナミクスを表現する方法」もあります。
スプラインダイナミクスが扱える機能は、「場」、「衝突」、「変形」です。さらに、他のオブジェクトやタグを組み合わせることにより、「オブジェクト間のリンク」や「XPresso」も扱えます。
また、ヘアそのものにもダイナミクス機能が内蔵されていますが、これはヘア以外のオブジェクトを扱えないローカルな機能です。
7. クロスタグ
クロスタグは、「クロス」に含まれるポリゴン専用のダイナミクス機能です。ただし、クロスは「Studio」グレードでしか使えません。
「ダイナミクス」の機能と比較すると、厚みのないポリゴンで布や服を表現する場合は、クロスの方が優れています。逆に、風船のような閉じた立体を表現する場合は、ダイナミクスの方が優れています。したがって、ポリゴンに関しては、ケースバイケースで二つのダイナミクス機能を使い分けるようにして下さい。
クロスが扱える機能は、「場」、「衝突」、「変形」です。さらに、他のオブジェクトやタグを組み合わせることにより、「オブジェクト間のリンク」、「XPresso」なども扱えます。
8. IKタグ
「IK」タグは、キャラクタ機能の中に入っているIK専用のダイナミクス機能で、鎖のように一列にリンクされたオブジェクトにしか適用できません。ただし、全てのグレードで使えます。
IKタグが扱える機能は、「場」と「衝突」です。IKチェーンにトレーサを適用してスプライン化することも可能ですが、基本的にこの機能はIK専用と考えた方がいいでしょう。
9. 標準パーティクル
標準パーティクルは、CINEMA 4Dに最初に搭載されたダイナミクス機能です。そして、現在「場」と呼ばれている機能も、そもそもは標準パーティクル用に作られたもので、その後他の機能にも組み合わせられるように拡張されました。
標準パーティクルは、「パーティクル」に対する「場」の影響しか計算できません。また、「XPresso」も扱えません。しかしその分簡単で、全てのグレードで使うことができます。
10. ThinkingParticles
標準パーティクルと同じように、ThinkingParticlesの中にもダイナミクス機能が入っています。ただし、ThinkingParticlesは「Studio」グレードでしか使えません。
ThinkingParticlesが扱えるオブジェクトは、「ThinkingParticles」だけです。また、扱える機能は、「ThinkingParticlesの場」と「衝突」だけです。とは言ってもThinkingParticlesは非常に強力な機能なので、オブジェクトやクローンを連動させることができます。また、「パーティクル対オブジェクト」だけでなく、「パーティクル対パーティクル」の衝突も表現できます。
さらに、ThinkingParticlesはXPressoで拡張することを前提に設計されているので、プログラムを書けばいくらでも複雑な表現ができます。例えば、ThinkingParticlesをダイナミクスで動かすこともできますし、逆にダイナミクスをThinkingParticlesでコントロールすることもできます。
11. XPresso
XPressoもまた重要なダイナミクス機能の一つです。XPressoは、「オブジェクト」や「ポリゴン」、「スプライン」、「ThinkingParticles」を扱うことができます。また、XPressoは全てのグレードで使えます。
まず、XPressoの中には「衝突判定」や「距離」、「光線の衝突」といったダイナミクス機能の基礎となるノードが用意されているので、「重力」や「剛体の衝突」といった単純なダイナミクスは簡単に書くことができます。
次に、現実の仕事では、標準的なダイナミクスで表現できない特殊な要求が発生し、XPressoを使わざるを得ない、ということがよくあります。例えば現在のダイナミクスには「磁場」を表現する機能がありません。また、「流体(気体や液体)」を表現する機能もありません。
流体の働きを物理的に計算するのは非常に難しく、「RealFlow」のような専用のソフトウエアを使っても、目的とする絵を作れるとは限りません。そのような場合、目的に応じて単純化、特殊化した物理モデルを考え、自分でダイナミクス機能を作ることが唯一の解決方法となります。
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